最近性格変わったって言われます
「動くなッ!」
何だろう、私たちって今年厄年だっけ。船内を歩いていたら数々の仕掛けに襲われ、挙げ句の果てに罠にかかったブルマさんを人質に私と同じ年かそれ以上の子供たちにたくさんの銃口を向けられる始末。もうやだ勘弁してよ。
「お腹すいたね、悟飯」
「お、おねえちゃん、今はそんなこと言ってる場合じゃ…」
「だって話しかけたって無言貫くんだからもういいんじゃない?ほら、私ってばこう見えて意外と短気だからさ」
「ダメだからなシュエ。落ち着けよ、頼むから何もするんじゃないぞ?」
「大丈夫ですって多分」
「(なんだろうこの言いようのない不安は)」
ふっとどこか遠くを見つめたクリリンさんを尻目にもう一度周りを見回す。うーん、見せしめに1発くらいぶっ放してもいいんじゃないかな…
「ふん!」
「いッ…」
めしょり、とひしゃげた床に周りの子供たちが一斉に私から距離をとった。うん、これなら床壊すだけですむし、怪我人を出さずに話の通じるやつが出てくるかもしれないからこれでいこう。ドン引きする弟とクリリンさんをそっちのけでもう一度床を踏み抜こうと力を込めたときだった。
「シュエちゃんやめなさい!!」
「んあ?」
…え、ブルマさん、銃口の数増えてない?気のせいかと思ってごしごしと目を擦ってみるがどうやら幻ではないらしい。何したのあの人。
「いいから早く降参しなさいッ!!」
「えぇー…」
ちょ、さっきと言ってること違う…
もうわけが分からなくなった私たちはとりあえずぼぅっとした。なんか、考えても埒が明かなくなってきたような…
ぼけぇっと意識を軽く飛ばしていたら、向こうから少年が1人光線銃を片手に歩いてきた。この人がリーダーっぽいけど…はたして話は通じるのかどうか。一歩悟飯が前に出た。
「は、話を聞いてください!ぼくたちは地球という星から来た者で、決して怪しくは…ッ」
「!!」
ズドンッと悟飯の足元すぐ近くに撃ちこまれたそれにビキリ、と額に青筋が浮かぶのがわかった。こいつ、こっちが下手に出てりゃいい気になりやがってこのやろう…!
いくら精神年齢がおばさんだったとしても、大事な弟が目の前で危ない目に合っているのなら黙ってるわけにはいかないから。大人げない?悟飯が大事なだけですけど。
「ちょっと、人の弟に何すんの。ん?バカなの?死ぬの?」
「ぐ…お、お前たち侵略者の話なんて聞きたくない!!」
「聞いてもいないくせに勝手なこと言うのやめてくんない?そもそも誰がこの船侵略しにきたってぇのさ。勘違いもほどほどにしてほしいよ」
「そ、そうだよ!俺たちは本当に怪しいものじゃないんだって!!」
「クリリンさん知ってます?自分怪しくないんです!って言ってるやつほど怪しく見えるって」
「お前今ここでそれ言う?」
「ッうるさい!!」
2発、再びに私たちに撃ってきた少年をギッと睨み付ける。何か私サイヤ人と戦ってから性格悪くなった気がするんだけど。多分これ気のせいじゃないやつ。
「……」
「ん?」
ふと視線を下げると、すぐ近くにぬいぐるみを抱いた女の子がきょとん、と私を見上げていた。な、なんなのかね…
「…えっと、何か用かな?」
その子の目線に合わせて屈んでやると、その子はびくりと肩を揺らした。私、幼気な子には基本優しいから。にっこり、と笑いかけると、女の子は少し戸惑いつつも控えめに笑った。めっちゃ可愛いです。
「ッ…」
「ゼシン、早く殺しちゃおうぜ!こいつら絶対フリーザの手下だよ!」
「あ、あぁ…」
殺すしかないよな…
そう言う少年は先ほどと打って変わってどこか戸惑いを見せた。この人、本当はそんなに酷い人じゃないのかもしれない。多分この人たちが言うフリーザってのと何か関係があるのか…
ぐっと視界の隅でクリリンさんと悟飯が構えたときだった。
―ドゴンッ
「うわぁああ!!!」
突然船が大きく傾き、この場が騒然となった。操縦室からこの部屋に飛び込んできた男の子の話によると、流星群の中に船が入ってしまったらしい。このままじゃこの船が大破するのも時間の問題だ。逃げ惑う子供たちを横目に私たちは立ち竦んだ。
「クリリーン!!今のうちに、助けなさい…ッ!!」
あぁ、うん…やっぱりブルマさんはブルマさんだった…
はぁ、と人知れず溜め息を溢したクリリンさんに私たち姉弟は心底同情したのだった。
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