拝啓、死にそうな君へ
「シュエちゃーん!ちょっとこっちさ来るだー!」
明日に備えて荷造りをしていると、庭にいたお母さんに呼ばれた。なんだかあまりよろしい予感はしないので逃げ出したいところだが、そうするとめちゃくちゃ痛い拳骨が待ってるので大人しく向かった。なんだか今から裁判掛けられる人みたいな気持ちだなぁ。つまるところ謎の緊張感に苛まれています。
「お母さん?何かyぶふぉッ!!!!」
「……おねえちゃん、」
ドアを開けた瞬間まるで七五三のような坊ちゃん頭の悟飯がいました。お母さんに切ってもらったのかな、らしいっちゃらしいけど…ぶッ。
ひーッ!!ちょ、何それ笑う…!可愛いけど…ッ可愛いけど…!!
「ひゃっはっはっはっはッ!!ご、ごはぶふッ…!な、何その頭めっちゃ面白い…!」
「笑わないでよぉ…!」
ポカスカと叩いてくる悟飯を避けながら私はさらに笑い転げた。だ、だってあれは…!ダメだ堪えれない。
「ひぃーッ…ひぃーッ…い、いいじゃんそれ…ッくふ、か、可愛いよ悟飯んんん…ッ」
「笑ってるのバレてるからね、おねえちゃん」
むっすぅー。と膨れ始めた悟飯。やべ、ちょっとやりすぎたわ。まぁでも腹よじれるかと思うくらい面白かったけども。あ、思い出したらダメだわ。
「なぁに笑い転げてるだか。次はシュエちゃんの番だべ?」
「え」
あれおかしいな今死刑宣告された気がしたんだけど。え、何。私も坊ちゃん頭になるの?いやだよ勘弁して私このままがいいんだけど。
「我が儘言うでねぇよ。人類初めての宇宙なんだから、失礼のないようにきちんとしなくちゃ」
「大丈夫たよお母さんほら悟飯だってこんなに礼儀正しそうな頭になったんだから心配いらないってほら私はこのままで」
「そうはいかねぇべ!さあシュエちゃん、こっち来るだ!」
しゃきんしゃきん、と鋏を鳴らすお母さんが今まさに亡者の舌を切り落とそうとする鬼にしか見えないんだけど。
あ、悟飯そんなところでこそこそ笑ってんなよ。
「つかまえたッ!!」
「ぎゃッ!!ちょ、お母さん本当勘弁して私死んじゃう」
「髪切ったぐれぇで死ぬやつがあるわけねぇだ!」
「のぉおおおおおッ!!!」
*****
「あっはははッ!!お、お前ら本当に悟飯とシュエかよー!どう押したんだその頭!」
「…お、お父さんにも笑われました」
「笑いたきゃ笑えばいいですよ。思いっきりね」
「お、怒るなよ…」
出発日当日。悟飯は本当に七五三のような恰好にされ、私は白のワンピースに紺色のボレロとまるでピアノの発表会のような服を着せられた。ちなみに前髪は素晴らしいくらいのパッツンにされましたよえぇ。
後ろの髪は何とか回避したものの、ほぼオン・ザ・眉毛に等しい位の長さである。私前世を含めてパッツンにされたの初めてなんだけど。
「これは下着の替えと勉強道具一式。あ、こっちのカプセルにも入ってるだよ。んでこっちが2か月分の薬とビタミン剤。ドライヤーにお茶碗とお箸にそれから…」
「も、もう結構です…」
「…なんか、宇宙服なんて来てる私がバカみたい…」
それぞれの思いを胸に私たちは今宇宙船へと乗り込んだのだった。おいちゃんによってどさどさと積み込まれる荷物に顔が引きつったけど…うん…
「ちゃんと飯食うだよー」
「毎日お手紙書くだよぉー!」
お母さんそれ無茶やでぇ…
ふっと空の彼方に目を向けた瞬間がしょん、と閉まる宇宙船。あ、私またねって言うの忘れてた。
「ねぇブルマさん、荷物ってどこに置いとけばいいですか?」
「適当に置いときゃいいでしょ!早く座んなさいよ!」
…あれ、なんかブルマさん、怒ってる?なんで。ちなみに私心当たりないです。
「…なんか、機嫌悪いぞ?」
「出発まで5秒前。4、3…」
「え!?ちょちょちょちょっと待ってぇえええ!!」
「ぶ、ブルマさん!!私たちまだ座ってないですぅうううううう!!!」
「2、1、発射!!」
どぎゃんッ!!と勢いよく発射した宇宙船は激しく揺れながら大気圏を目指したのだけれど、正直私そんなこと考えてる暇ないですベルト締めてないし荷物が散乱するしなんか悟飯飛んで来たしちょっと死にそうです助けて。
「あだぁッ!!」
「く、クリリンさぁああああああんッ!!」
救急箱がダイレクトに頭に直撃したクリリンさんは床をのたうちまわった。うわぁいったそ…
拝啓地球にいるお父さんお母さんおいちゃん亀仙人さん。ナメック星に行く前から前途多難な予感がします死にそうです。
「おおおおねえちゃぎゃぼッ」
「ごはぁあああああああんッ!!!!」
2か月やって行けるか不安になりました。
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