続 ゴーストバスターかまぼこ | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
03




視えざるものが視えなくなって、少しずつだけど心に余裕ができてきた。今までは私と関わる事で、周りの人たちを巻き込んだり、不気味だ化け物だと後ろ指指される事を恐れて必要最低限にしていた誰かとの交流も、炭治郎くんや親分、善逸くんのおかげでほんの少し増えた気がする。


「杜羽ー!一緒に帰ろー!」

「ち、ちょっと待って…!」


いそいそと帰る準備をしていると、クラスメイトの友人が元気いっぱいに駆け寄ってきた。「早く早く」と急かす友人を宥めながら鞄の中に教科書を詰めていて、ふと彼女の向こう側に善逸くんが横切ったのが見えた。思い出すのは今朝の会話。

…そういえば、夢見が悪くて眠れないって言ってたよね。
以前よりげっそりとした顔とどす黒い目の下の隈を見る度に胸が締め付けられて苦しい。…何か、私が善逸くんにしてあげられる事はないかな。あの時私と美羽を救ってくれたみたいに、力になれたら…


「…杜羽さぁ」

「ん…えッ!?な、何?」

「そんなに我妻くんの事気になるの?」


気になる。
にやにやと口を歪めながら問いかけてきた友人にイラッとした。いやだって、気になると言えば気になるけど、きっと私の“気になる”と友人が思う“気になる”は種類が違うと思うんだ。というか、顔でわかるからな、面白がってるの。


「違うから!善逸くんは気になるとかそんなんじゃ…」

「ほんとかなぁ?だってさ、あんたらいつの間にか名前で呼びあってるし、不思議に思うくらいには仲良いじゃん?」

「それなら、善逸くんだけじゃなくて炭治郎くんや親分だってそうでしょ!」

「あ、そっか」

「もう…」


何が面白いのか、心底愉快だと言わんばかりににやける友人を横目で睨んだ。どこの女の子も、なんでこういう手の話が好きなんだろう…何かと結びつけようとするから、困ったものである。深くため息を吐いた。


「まぁ…何はともあれ行ってあげなよ」

「え?」

「からかうのを抜きにしても今日の我妻くん随分調子悪いみたいだし、杜羽が本当に心配してるのわかるからね」

「でも…」

「あー、私はいいの!そういえはお母さんから醤油買って来てって言われてたの忘れてたし、付き合わせるのも申し訳ないしね。ほら、行った行った!」

「ご、ごめん、この埋め合わせはするから!」

「ミ○ドのドーナツ5個でいいよ!」


いや多いから!なんで5個も食べようと思ってんの馬鹿なの!?「2個!!」振り返りざまにそう叫んでから教室を飛び出した私は、善逸くんが去って行った方向に足を向けた。





「善逸くん!」


思いのほか歩くのが早い善逸くんに追いついたのは、校門を出て少し歩いた先だった。振り返った善逸くんは私が追いかけてきているだなんて思ってなかったのか、ぎょッと目を見開いて足を止めた。


「杜羽ちゃん!?ど、とうしたの、そんなに慌ててさ」

「善逸くんと一緒に帰ろうと思って」

「えッ!?」

「だ、ダメだった…?」

「全っ然!ダメくない!むしろ嬉しい!…けど、一緒にいた子は?帰る約束してたんでしょ?」

「あの子なら大丈夫!むしろ行っておいでって言ってくれたから」

「そっかぁ…」


ふにゃり、笑う善逸くんになんだか照れくさくなる。どちらからともなく歩き出した私たちは無言だったけれど、気まずくなるような空気はない。だけど…


「(力になるって、具体的にどうすればいいんだろう…)」


ちらり、横目で善逸くんをみあげる。夢見が悪いってことは、悪い夢ばかり見るって事だよね。それを見るのが怖いから眠れないのなら、怖くなくなればいい。なら…………添い寝?…って、いや、いやいやいや、何考えてんの私。馬鹿か、馬鹿なのか。私と添い寝とか誰得だよ。嬉しくないに決まってんじゃん、逆に悪夢見るわ。
はは…と虚空を見つめながらから笑いしていると、突然ぐいッと腕を引かれた。その直後に、さっきまで私がいたところを後ろから自転車が横切る。


「ご、ごめんね善逸くん!危うく自転車に轢かれかけたよ。ありがとう、手を引いてくれて」

「え?あ、うん…どういたしまして」

「…善逸くん?」


なんだろう、微妙に歯切れが悪いような気がした。首を傾げていれば、善逸くんはへちょりと眉を垂れ下げる。


「ううん…なんでもないよ」


なんとなく、なんでもなくないような気がした。だけど私は、善逸くんの妙に優しくて、それでいてどこか寂しそうに笑う顔に何も言えなくて「そっか」とだけしか言う事ができなかったんだ。