続 ゴーストバスターかまぼこ | ナノ
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01




夢を見る。

酷く古めかしい電車に揺られる夢だ。

気付いたらここにいて、「あぁ、これは夢なんだ」と自覚する。所謂明晰夢。けれど、普通の明晰夢とは少し違う。明晰夢とは、自分が今夢を見ているのを自覚し、尚 且つ夢の中の状況を自分の思い通りにコントロールする事ができるものだ。
夢を見ているんだと自覚する事はできる。けれど、自分自身で体を動かすことはできない。

…話を戻そう。これが“夢”だと気付く時には、毎回薄暗くて不気味に点滅する蛍光灯のおんぼろ電車に乗っている。自分の他にもおばあさんだったり、サラリーマンだったり、同い年っぽい女の子や小学生と思われる男の子や、他にも何人かがいて、誰も彼も一様に顔色悪く片方の座席に並んで座っていた。
毎回、同じ夢だ。だけど、一つだけ違う事があった。


『次は活け造り〜、活け造りです』


軽快なアナウンス。少しノイズがかった声が不気味さを際立たせていて、けれど、このアナウンスがなる度に、座っている場所が少しずつ移動している。

車内にけたたましく響く絶叫。振り向きたくない、見たくないという自分の意思とは別に体は勝手に動く。車内の一番端…自分が今座っている反対側に座るサラリーマンの男性が、車掌の姿をした黒い人影に群がられ、持っていた刃物で体を切り刻まれていた。男性の体から次々と臓器やらが抉り出され、身を捌き、本当に活け造りのようにされていた。一瞬にして車内が強烈な臭気に包まれ、気付けば耳が痛くなるほどの断末魔は消えている。

誰もがあの惨劇を目の当たりにしているというのに、自分を含めた誰一人として発狂したりしないのだ。

アナウンスが鳴り、一番端に座る誰かがアナウンスの通りに殺される夢を、ここ3週間ほどずっと見ている。





「ッ!!」


飛び起き、たった今土砂降りの雨に降られたのではと思うほど滝のように汗が流れ落ちる。
荒く息を繰り返し、バクバクと口からまろび出そうなほど脈打つ心臓を抑えた。

残虐に殺される誰かの悲鳴が消えた頃に目を覚ます。胸くその悪い、夢心地もへったくれもない最悪な目覚めだ。

残酷すぎる所業と、刻々と迫り来る死の恐怖にいつしか瞼を閉じる事が怖くて仕方がなかった。一人、また一人と惨たらしく殺されていくのを目にしても、泣き叫びたくても、喚き転がりたくても、逃げ出したくても、不自然に固まる体はそれを許してくれない。

目尻に溜まる涙を倦怠感に塗れた腕で拭う。本当、最悪。なんたってこんな事ばかり…嫌になる。


「…夜なんて、来なければいいのに…」


吐き出した言葉は、誰もいない真っ暗な部屋に虚しく溶けた。
けれど、拒もうが何しようが、夜とは誰にでも平等に、残酷に訪れるものである。


『次は抉り出し〜抉り出しです』