続 ゴーストバスターかまぼこ | ナノ
11
どれくらい歩いたかなんて、もうわからない。随分な時間を歩いているとは思うのだけれど、時間の概念がないのか、この世界の空はずっと不気味に赤く染った夕焼け色だった。
時折振り返って周囲を警戒したりするけれど、さっき電車の中にいたあの黒い影たちはどうやら追いかけてきていないようで、私と善逸くん、ただ2人ぽっちで長い長い線路を歩き続けていた。
「…どこまであるんだろうね」
「わからない…けど、なんとなくこっちであってるような気がする…」
「勘?」
「まぁ…うぅ、ごめんよ杜羽ちゃん、怖い思いしてるのに行く先が勘だなんて言って…」
「私は大丈夫。それに、善逸くんがいるから」
「杜羽ち"ゃ"ん"…!」
どばッ、と滝のように涙を流す善逸くんに苦笑いを返す。
「…猿夢、かぁ…」
「…よく知ってるね」
なんとなしに呟いてみたら、びくり、とこっちが驚きそうな勢いで善逸くんが肩を揺らした。
「桑島さんに教えてもらったの。…惨い悪夢だね…」
「まぁ、悪夢ですんでいればいいけど… 」
「え?」
どういう意味?そう聞こうとした瞬間、突如として善逸くんが叫んだために叶うことはなかった。というか、びっくりしすぎて5センチくらい浮いた気がするし、なんなら心臓が1センチ縮んだと思う。善逸くん声でかい…
「見て!!駅!!」
「本当だ…!」
もしかしたら帰れるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら再び走り出す。前方に見える私たちがよく見るような小さな駅のホームが徐々に大きくなっていく。夢の中だから当然無人なのだけど、今はそんなこと気にしてない。
善逸くんの手を借りて線路からホームに上がる。ひとまずここで電車を待ってみようよ、と善逸くんに提案しようと振り返ると、とある一点を目を見開いて凝視する善逸くんを見つけた。
「善逸くん?」
「………」
「ねぇ、善逸くん!」
「ぅ、えッ…!?へ!?な、何!?どうかした!?」
「いや、なんか急にぼーッとするから…この看板がどうかした?」
「いや…うん、なんでもない。なんでもないよ」
「そう…?」
「うん!ほんと…なんでもない…!それより、この駅は電車が来ないみたい。時刻表真っ白だし…あの階段からコンコースに上がれそうだから行ってみない?」
「え?でも…」
「ここにいたって仕方ないし…ね?行こ行こ!」
「わ、わかった…!わかったから押さないで…!」
ぐいぐいと背中を押されるがまま足を動かす。急に様子が変わったから少し心配したけど、電車が来ないんじゃ善逸くんの言う通り、ここにいたって仕方がない。
ふと、なんとなくさっきまで善逸くんが見ていたものが気になって振り返ってみた。
“き…ら…"駅”
ちらりと見えた看板は、古びているのと錆びているのとで所々文字が霞んで読めない。かろうじで駅の名前だということはわかるけれど、それだけだ。
なんとなく薄ら寒い感覚を覚えながら、妙に長く感じる階段を登っていった。