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俺が竈門家にお世話になるようになって、今日でちょうど一週間。一文無しな俺に癸枝さんは住み込みで働く提案をしてくれてすごくありがたかったし、だけど心の片隅では「どうせまた追い出される」だなんて諦めていた。

…諦めて、いたのに。


「うわッ…!」

「あー!善逸兄ちゃんがまた斧吹っ飛ばした!」

「こら茂、そんな事言うもんじゃないぞ。お前だって吹っ飛ばすじゃないか」

「うッ…あ、あれは汗で滑ってるだけだから!」

「善逸ごめんな。茂はもう一人お兄ちゃんができて嬉しいんだよ」


だなんて、困ったように笑う炭治郎と唇をとんがらせる茂くん。


「善逸さんごめんなさい、お願いがあるんですけど…」

「え、何々?禰豆子ちゃんの頼みならなんでも聞いちゃうよ俺!」

「花子に漢字を教えてあげてくれませんか?いつもなら私が教えるんですけど、今日お兄ちゃんたちが町に炭売りに行くから六太を寝かしつけないといけなくて…」

「そんな事でいいなら任せて!」

「すみません、よろしくお願いします」

「善逸くんお願いしまーす!」


にこやかに笑う花子ちゃんとそれを窘める禰豆子ちゃん。


「善逸さん、ちょっと…」

「?葵枝さんどうかしまし…むぐッ」

「羽炭がたくさん里芋をもらってきたから煮っころがしにしたの。お味はどう?」

「…おいひい、れふ…」

「よかったわ」

「あ、善逸さんずるい!母ちゃん俺も!」


煮っころがしを味見させてくれて、いたずらっ子みたいに笑う葵枝さんと、煮っころがしをせびる竹雄くんをぽかん、と見つめた。


「あ、おーい善逸!今平気?」

「うん、ちょうど空いたけどどうかした?」

「炭を包むの手伝ってくれないかな。明日一気に売っちゃいたいから、できるだけ多く包んじゃいたいの」

「わかった、手伝うよ」

「助かる!ありがとう!」



「…ねぇ、ここにはもう慣れた?」

「え?…まぁ、なんとか」

「そっか」

「…羽炭たちはすごいな」

「何が?」

「だって、お互いを助け合いながら一生懸命に生きているから。それって当たり前のようで難しい事で、でもそれを簡単にやってのける竈門家の皆がすごく…」

「違うよ」

「へ?」

「助け合うのってすっごく難しい事だよ。でも、それができるのはきっと一人きりじゃないから。皆で手を繋いで、誰かが立ち止まればちゃんと振り返ってくれる優しい炭治郎たちがいるからできるんだよ」

「そ、か…」

「…私的には、善逸もそこにいてくれたら嬉しいな」

「ッ…」

「だって、善逸といるのすっごく楽しいよ。善逸さえよければ、いつまでもここにいてもいいからね」


なんて、心底優しい眼差しと音を響かせて俺を見つめる羽炭に、ほろり、涙が落ちた。


あぁ、ここにいる人たちはどうしようもなく暖かい。誰もが偽りの音なんて出しちゃいない。自分自身、あるがままのそのままの音をさせるこの場所がすごく居心地がよくて、毎日泣きそうになる。嘘、もう泣いてる。
優しくて、暖かくて、まるで陽だまりだ。柔らかい春の陽射しが集まるこの場所に、こんな俺も入れてくれるんだ。
…いてもいいんだって、言ってくれるんだ。

だからこそ、こんなにも優しい人たちを俺の事情に巻き込みたくない。だからちゃんと解決させて、もし、もしもその時にまだ俺を迎え入れてくれると言うのなら…


どうかそこを、俺の帰る場所にしてもいいですか…?