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炎上汚染都市 冬木1



ほんと、最悪だと思う。
たまには世間の役に立とうと献血に赴いたのが運の尽きだったのだ。

何となく献血に行って、そしたら知らないめちゃくちゃ不審な男にしつこく付きまとわれ。え、俺こんな露骨なストーカー受けてるの?嘘過ぎない?なんて思いながらあまりの男のしつこさに不承不承折れればその瞬間に目隠しとヘッドフォンを付けられて、あれよあれよと気付けばこの施設に放り込まれたのだった。


「はぁぁああ…無理…ほんと無理…普通に死ねる…なんで俺こんなところにいんの…嘘でしょ、嘘過ぎない…?」


しかもこの施設に入る時にした…し、シミュレート…?そのせいでなんだか気持ち悪いしふらふらするし…
てゆーか、俺、これからどうすればいいの…


「あ」

「…?」


なんて、思いながらカルデアの廊下を歩いていると、ふと前から三人の人間が歩いてきた。
一人は大体俺と同い年くらい。青空みたいな青い目が特徴的。もう一人は眼鏡のめちゃくちゃかわいい女の子。最後はなんか胡散臭そうな糸目の男。
声を上げたのは黒髪の男の方らしい。まぁ、なんせこの広い施設内で誰かと出会えたのはかなりありがたい。


「あの、すみません…俺、何が何だかわからないままここに連れてこられたんですけど…」

「あぁ、君もだったのか…本っ当にすまない…」

「え、何…?」


なんか謝られたんだけど…いや、よくよく考えたら普通に謝られる立場だ、俺。だってさ、ほぼ拉致だよ。
とりあえず文句は後で言うとして、俺のこれまでの状況を軽く説明すれば黒髪の奴が半泣きになって握手してきた。

男と握手しても嬉しくねーよ!!


「わぁ…俺と同じだ…」


…あぁ、なるほど。
俺はこいつの大体の成り行きを察した。


「君は適応番号49番の我妻善逸くん…だね?私はレフ・ライノール。こちらの彼は藤丸立香くんだ。これから所長の説明会があるから、案内するよ」

「はぁ」


どうやらその説明会とやらに参加すれば、俺がなぜこの施設に連れてこられたのかわかるらしい。
レフさん(レフ教授と呼んでくれと言われた)に先導されながら長ったらしい廊下を歩く。
…確実に迷子になるな、これ。

その間、藤丸立香と紹介された男と色んな話をした。
彼も俺と同じ日本出身である事。献血に行って怪しい男に家まで付きまとわれ、渋々首を縦に振れば目隠しとヘッドフォンを付けられてここまで連れてこられた事。

…いや、共通点多すぎだろ。俺が言うのもなんだけど、つくづくこいつも不憫だな。
おかげで仲良くなっちまった。俺としては男と仲良くなるよりこいつの向こうにいる眼鏡女子と仲良くなりたいんだけど。

……というか。


「…なぁ、立香…大丈夫か…?」

「え、何が?」

「いや、めっちゃふらふらしてんじゃん」

「先輩は入館時のシミュレートで体調…というより、睡魔に襲われています。なのでそのせいかと…」

「え、俺全然そんな事ないけど…少し気持ち悪いくらい…?」

「恐らく、我妻くんは多少なり耐性があったんだろう。個人差もあるだろうからね」


そんなもんなのかねぇ。
けど、この施設の人間が言うのならそうなのかも。よくわからん。


「さぁ、着いたよ。少しばかり遅刻だが、まぁ所長も許してくれるだろう」


どうやら辿り着いたらしい。仰々しいドアに萎縮するが、そんな俺たちをよそにレフ教授と眼鏡女子は躊躇なくドアを開き、足を踏み入れる。
俺と立香は思わず顔を見合わせた。


「…まぁ」

「どうにかなる、かな…?」


とりあえずは二人の後に続いた俺たちだった。