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「こうも荷物が多かったら、やっぱり大変だね」


無事に善逸と仲直りを果たした私は、マリアから課せられたお使いを終えて、かさばる買い物袋を善逸と分け合って帰路を辿っていた。
まだ少し沈黙は怖い。だからできるだけ会話が途切れないように善逸に話しかけるのだけど、どことなく体調が優れないのか、ぼんやりとしている。


「…具合、悪い?顔色が少し悪い…やっぱり部屋にいた方がよかったんじゃ…」

「ありがとう、羽炭。でも俺は平気だよ」

「そう?…なら、少し休憩して行こうか。せっかくおやつも買ったんだから。ね?」

「…うん」


善逸が持つ荷物を半分持って、近くの工事途中になっている廃ビルの中に身を滑り込ませた私たちは、そのへんに転がっていた木材に腰掛けて菓子パンを頬張った。


「嫌な事もたくさんあるけど、存外自由があってよかったね。施設にいた時じゃ想像できなかった」

「うん…」

「…フィーネの魂が宿る器として施設に閉じ込められていた私たち。私たちの代わりにフィーネの魂を背負うことになったマリア…」


自分が自分でなくなる怖いことを、結果的にマリア一人に押し付けてしまった。
…マリアは、一体どんな気持ちでフィーネを背負っているのだろうか。


「善逸………善逸?」


ふと善逸に目をやると、顔を真っ青にさせて苦しそうに息を吐いていた。尋常じゃない冷や汗に血の気が引いた。


「善逸、もしかして…今までずっとそんな調子だったの…!?どうして言ってくれないの!?」

「だ、大丈夫…!ここで少し休んだらマシになったから…」

「全然マシになってない!早く帰ろう…!ヘリになら薬も…あ!」


急に立ち上がったからか、目眩を起こしたらしい善逸がバランスを崩した。そして、たまたま手をついた場所が悪かった。不安定に積み置かれた鉄パイプを支える鉄骨、それに善逸が手をついた瞬間、激しい音をたてながら私たちにそれらが降り注いできた。


「ッ!!!」


雨のように降り注ぐ鉄パイプたち。当然のこと、蹲る善逸を置いて行けるわけがない。けれどこのままここにいれば私もろとも善逸までも大怪我をしてしまう…!どうにか…どうにかしないと…!考えろ…!

善逸に覆いかぶさり、咄嗟に頭上に手を翳した。





「…あれ、痛く、ない…?」


それどころか、鉄パイプが落ちた音もしなかった。
うっすら目を開ける。最初に飛び込んできたのは、青白い顔で横たわる善逸と、そんな彼女の頬を撫でる紫苑の光。


「え…?」


弾けるように振り返ると、私が翳した手のひらを中心に広がる、六角形が連なった障壁のようなもの。それが鉄パイプから私たちを守っていた。


「なに、これ…」


こんな力、私知らない。シンフォギアを纏っているのならいざ知らず、なのに、どういうわけか私から放たれる見ず知らずの力。

一瞬、巫女のような風貌の女性が瞼を過ぎった。


「もしかして、これ…フィーネの…!?」


その事実は、私の体を震わせるには十分だった。