きゅう
※楽曲の歌詞が出ます。苦手な方は飛ばしてください。
私たちが抱く彼女の印象は、口が悪くて銃弾を遠慮なく私たちにぶっ放すおっかなガールだった。
…けれど、今ステージに立つ彼女…雪音クリスさんは心底楽しそうにのびのびと歌っていて、透き通るような歌声は例外なく会場の人たちを魅了した。
かく言う私たちも彼女の歌声に聞き惚れた観客その一とその二なんだけれど。
ほぅ、と思わず感嘆の息を吐いてしまうくらい。
「勝ち抜きステージ、新チャンピオン登場!さぁ、次の挑戦者はー?」
司会をしている女の子が、会場の熱冷めやらぬがままそう言い放った。
…いよいよだ。
「行くよ、善逸」
「はぁぁぁああ……ほんとにやるの…?」
「やるよ。それに、最後決断したのは善逸じゃない。ね、頑張ろう」
「…うん…」
さて、腹も括るれたところでっと…
「はい!やります!」ばびッとわかるように手を挙げながら起立。すかさず私たちに降り注ぐスポットライトの眩しさに目を細め、ステージを見やると驚愕に目を見開いた雪音クリスさんが私たちを睨みあげていた。
「ち、チャンピオンに…」
「挑戦します」
善逸の手を引き、ステージに上がれば雪音クリスさんが威嚇する。それに対して善逸が「べーッ!」と舌を出した。
「こら、善逸。そんな事しないの。私たちの目的は?」
「…聖遺物の欠片から造られたペンダントを奪い取る事」
「わかってるならよし。…聞けば、このステージを勝ち抜けば望みを一つ叶えてくれるんでしょ?だったら…」
「おもしれぇ」
「「え、」」
「やり合おうってんなら、こちとら準備はできている!」
どうやらあちらは思いのほかやる気満々らしい。それに少し呆気に取られるが、司会の子が喋りだしたところで雪音クリスさんはステージ袖に引いて行った。
「それでは歌っていただきましょう!!…えーっと…」
あぁ、そう言えば名乗っていなかったっけ。SONGの装者側には炭治郎がいるからそんな事筒抜けなのだとは思うけど…
「竈門羽炭と」
「あ、我妻善乃…」
改めて、彼女らに自己紹介。そして私たちが歌う曲はもう決めてある。
「オーケー!!二人が歌うのはOrbital Beat!もちろんツヴァイウィングのナンバーだー!!」
始まる前奏。まだ緊張しているらしい善逸に目配せして、そっと笑いかけると彼女はぎこちないながらも笑い返してくれた。
息を吸ってーー
Flyー!!
体が自然とリズムを刻む。
何度もみたツヴァイウィングの振り付けを息を吸うように、当たり前のように覚えている。
幾千億の祈りも やわらかな光でさえも
全て飲み込むジェイルのような 闇の魔性
カルマのように 転がるように
投げ出してしまえなくて
今 私 らしく
駆け抜けて!!
届け届け高鳴る バルスに
繋がれたこのBurning heart
強く強く心の シリウスを ただ見つめる
この闇を越えて!!
あぁ、楽しい。すっごく楽しい。歌ってこんなに楽しいものだったんだ。そもそも、私ってこんなに楽しく歌が歌えたんだ。
善逸を見ればちょうど彼女も私の方を見ていて、すごく歌うのが楽しいって表情をしていた。
絡み付くようなノイズも 凍りつく静寂さえも
全て掻き消す キャロルのような 君の鼓動
裏切るより 傷つくより
穢れなく生きたかった
そんな 夢を 今は
眠らせて!!
この手この手重なる 刹那に
砕かれたParanoia
熱く熱く奏でる 記憶でリフレインしている
命の向こうで!!
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☆こそこそ話
☆ツヴァイウィング
風鳴翼と天羽奏によるツインボーカルユニット。
翼も奏も特異災害対策機動部二課に所属するシンフォギア適格者であり、ツヴァイウィングは両者の「表の顔」としての意味合いが強い。
結成のきっかけは戦場で「歌を聴いてもらう事で誰かを勇気付けられる」事を知った奏の発案による。
なお、天羽奏はシンフォギア後天的適合者で、適合係数が低いまま命を燃やす歌「絶唱」を口ずさんだことで命を落としている。
☆ORBITAL BEAT
ツヴァイウィングが歌う楽曲。
このお話では奏パートを善逸(黄)、翼パートを夢主(赤)が歌っています。