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天王寺松衛門と善逸


付き合っていない
募集より





「羽炭、伝達!シノブガ呼ンデイル!急イデ行クベシ!」


縁側でまったりと羽炭と談笑していると、どこからともなく現れた鴉が無情にもそう告げた。


「しのぶさん?何だろう、どうかしたのかな…?」

「考エル前ニ早ク行ケ!」

「はいはい、わかったから!もう、髪引っ張らないで!ごめん善逸、ちょっと行ってくるね」

「へ!?あ、うん、いってらっしゃい」


ぱたぱたと鴉に急かされて慌ただしく去って行く羽炭の背中を見つめる。せっかく二人っきりでお茶飲んでたのに、とんでもねぇ鴉だ。
さっきまで羽炭が座っていた場所になぜか腰を落ち着けている羽炭の鴉を睨めつける。なんたってお前がそこに座ってんのよ。


「……」

「……」


…なんか、鴉と並んで座ってんの、すっごい変な感じ。というか、なんで俺鴉と座ってるんだったっけ。いくら羽炭の鎹鴉だとしてもさぁ、気まずいから。チュン太郎みたく手のひらサイズでこんまりしてるんならあれだけど、鴉だから。地味に大きいから威圧感が…「善逸!」ほああああ!?何!?なんなの急に!!


「オ前、弟子ニ気ガアルダロ」

「は、」

「雌二求婚スル雄ト同ジ気配ガスル」

「ちょ、は!?おまッ…!」


さっきから俺は一体何を言われているんだろうか。気があるって、気にかけるとかそういう意味?いや、その後に求婚する雄と同じとか言われてるんだけど、というか、なんでそもそも鴉にこんなこと言われてんの俺!!


「待って、待ってくれないか…え?なんでいきなりそんな事言われたの!?」

「オ前ニナンゾ、ウチノ弟子ハ嫁ニヤラナイ!」

「落ち着いて!?話し合おう!!」


もう混乱でしかない。嫁にやらないって言った?今。
“嫁”という単語に、ほわんほわん、と思わず想像してしまった。羽炭が「おかえり」って玄関まで出てきてくれる姿。食事を用意する時の後ろ姿。果てには、背中を流してくれてそのまま…


「カアアアアーーーッッッ!!!」

「イ"ヤ"ア"ア"ア"アアアッ!!!ヤメテエエエエエエ!!!」


想像の中で羽炭を押し倒そうとしたところで、それを見透かしたかのように目の前の鴉が頭をつついてきた。痛い痛い痛い痛い痛い!!ごめんなさい!!不純な妄想してすみません!!けどさ!!しちゃうじゃん!!少しは!!


「オ前ミタイナ雌ト雌ヲ行ッタリ来タリスル奴ニ!!弟子ハヤランッ!!」

「もうそんな事してないから!!俺は!!羽炭一筋なの!!」

「ウソツケ!!」

「信じて!?」


いや、日頃の行いなんだろうけどさぁ!それでも少しは信じてくれたってよくない!?だって俺、ほんと、もう誰彼構わず求婚したりしてないかんね!?
………声はかけるけど。


「ちょッ、何してるの!?」


未だにつついてくる鴉と攻防していると、運良く羽炭が帰ってきて鴉を俺から引き剥がした。「カアアー!!」ギャー!まだこっち来ようとしてるッ!!


「羽炭ぃぃ…!!」

「善逸、大丈夫!?ごめんね、この子、意地は悪いけど、誰彼構わずつつき回すような子じゃないんだけど…」


心底不思議そうに鴉を見つめる羽炭。いや、多分その原因は俺にあるんだろうけどさぁ…
つつかれていた頭を撫でてくれる羽炭の手を甘受した。「ごめんね、大丈夫?」たった今大丈夫になった。
自分の頬が緩むのがわかる。でれでれと顔の筋肉をそのままにしていると、ふと羽炭が抱える鴉と目が合った。「…………」ヒェッ…


「というか、しのぶさん私の事なんて呼んでなかったじゃない。どういう事?」

「え」

「知ラネェナ」

「もぉ…」


あいつ…あいつあいつ…!嘘ついた!!俺と羽炭を二人っきりにさせないためだけに!!嘘ついたよ!?鎹鴉なのに!!


「?善逸?どうしたの?」

「イエ…ナンデモ…ナイ、ヨ…」

「?」


それから羽炭の鴉は、羽炭と俺が二人っきりになったら必ず羽炭の膝の上を陣取るようになって、俺と鴉の仁義なき戦いが始まるのだった。





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天王寺松衛門と善逸の話。
素敵なネタをありがとうございました!