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if ラッキースケベは侮れない


ご都合血鬼術
キャラ崩壊
募集箱より




背中に感じる廊下の冷たさ。密着する身体はじんわりと熱を持って、服越しに大きな手が乳房を押し潰した。


「ご、ごめん羽炭…!」

「あぁ、うん…別にいいよ…」


別段、今私たちの間にそんな甘い空気はない。
引き攣る頬をそのままに何とか返事をすれば、目の前の善逸は夥しい程の鼻血を垂らしながらこれでもかと言う程顔をだらしなく緩ませた。

善逸がこんなにも鼻血を垂らすのには理由がある。同行していたカナヲ曰く、任務先で遭遇した鬼の血鬼術をまんまと善逸が浴びてしまったらしいのだ。

前方から歩いてきた善逸が突如として何もない所で転び、それを受け止めようと一歩を踏み出した瞬間、わしッ!と、両手で私の胸を鷲掴んだのを皮切りに頻繁に破廉恥が起こるようになった。
まぁ、こういう事もたまにはあるだろうと一度は許したんだ。許した、の…だけど…


「うわぁ!」


ーーぶちーん!


「…………」


隣を歩いていた善逸が何かに蹴っ躓き、その時になぜか私の隊服を掴んだ瞬間、上着だけでなく中のシャツの釦も諸共全部吹っ飛んだ。因みに言うと今ので六回目である。
胸にサラシを巻いていたから大事なかったのだけど、もはやここまでくるとわざとではないのかと疑ってる。わざとだろ、お前。


「えへ、ウィッヒヒ…ご、ごめんよ羽炭ぃ…わざとじゃないんだ…ウィヒッ」

「…わざとじゃないのならその嬉しそうな顔をやめろ」

「えー?」


顔中の筋肉全部が蕩けてしまったんじゃないかってくらいゆるゆるになった善逸の顔の腹立たしい事。というか、なんで私にだけ…

そう、どういうわけかこの善逸の破廉恥は私にしか発動しない。先程もアオイさんやカナヲと一緒にいたのにも関わらず、そこで転けた善逸は私の胸に顔面ダイブを決め込んだところである。これまでに起こった事故全部…私だけなのだ…

もはや服の役割を成さなくなった隊服を見下ろし、ため息を吐く。「なんでサラシ巻いてんの!?そこはぽろりを期待してたのになんで!!夢も希望もないじゃない!!」それが血鬼術をかけられた人間の言う言葉か。


「…あのさ、善逸…悪いんだけどもう少し離れて歩いてくれない…?」

「えー!!なんでよ!!」

「今の君の近くにいると何が起こるかわからないの!!離れて歩くか、動かないか!!今みたいに隊服破かれるのはごめんだし、むッ…胸、鷲掴まれるのやだ…」

「何今のかわいいかよ」


すん、と真顔になった善逸は徐に一歩を踏み出した。…瞬間、つるん、と善逸の足が滑った。よく見るとそこだけ綺麗に磨かれた跡があり、善逸はそこで滑ったようだ。…というか!!


「動くなっつっただろ!!」


咄嗟に倒れ込んできた善逸を避けようと後退すれば、つるん、と今度は私の踵が滑る。「え」少しずつ流れていく景色を呆然と眺めていると、善逸の顔が私の胸に埋まった。そして…


ーーどてーん!


二人揃ってなだれ込むように廊下に倒れ込んだ。しこたまぶつけた背中の痛みに顔を顰めた瞬間、電流のようなものが背中を駆け抜けた。


「ひゃんっ」


……………………え?

自分で自分の声を聞いて真顔になる。なぜ今あんな声が出た私…。今にも死にそうな心を抱えて恐る恐る視線を下げる。善逸のつむじが見えた。またか、そう思うけれど、もぞりと動いた善逸の手が胸の頂きに触れた。よくよく見てみれば、解けかけたサラシの隙間に善逸の手が入り込んで、直に私の胸を鷲掴んでいる。「んぁっ」い、今明らか意図して揉んだでしょ!?


「こ、こら…!やめないか善逸…!」

「いやだって手がサラシに絡まって取れないんだよ!あぁでも取りたくないいいい!!手が幸せ…」

「だ、だから、動かすなぁ…!」


もぞもぞと善逸が手を動かす度に背中が震える。わかってる、わかってるの、わかってるんだ!!これがわざとじゃなくて血鬼術でそういう風になってるって!!けど!!わざとじゃなくとも今の善逸のこれは明らかに意図されたものだろうが!!
手がサラシに絡まって取れないのはわかる!いやわからないけど!!だかと言って!!イコール揉んでいい事にはならないの!!

これがまだ「ごめんわざとじゃないんだほんとごめんんん!」ってどうにかしようとする誠意が見られたのなら私は何も言わなかった。善逸はどうにかしようとするどころか、どうにかなってやろうの魂胆見え見えで動くからもうどうしようもない。これは、正当防衛です。

胸元で「ウィヒッウィヒッ」と怪しく笑う善逸の脳天目掛けて、握りしめた拳を思いっきり振り下ろした。





「ごめん… 」

「私の半径5メートル以内に入らないでくれますか」

「ごめんって!!本当に!!めちゃくちゃ反省してるから許して!!」

「反省の色が見えません。近寄らないでください」

「は、羽炭…」

「寄るな!!」

「へぶぅ!!」


血鬼術が掛かってる最中もそうだけど、完全に血鬼術の効果がなくなった二週間は善逸を近付けさせなかった私であった。「羽炭ぃ…俺、羽炭に触れないのならこれから誰を触ればいいの…?」そういうところだよ、善逸。





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夢主にのみラッキースケベが発動する話。

素敵なネタをありがとうございました!