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学園祭は陰謀がいっぱい


もし善逸と夢主が同じクラスだったなら
学園祭ネタ
募集箱より





秋は学園祭の季節である。クラスが様々な出し物を用意して、生徒や外部の人たちを楽しませる一大イベント。
だけど俺は風紀委員。そう、やりたくもなかった風紀委員なのだ。この学園では、学園祭の進行等は風紀委員の管轄で、ゆえにクラスの出し物を取りまとめる学園祭においての最高責任者でもある。


「はーい、じゃ、適当に案出してってー…」

「我妻ぁ、やる気なさすぎだろ」

「じゃあお前がやれよ」


ぎッ、とクラスメイトを睨みつける。あいつは学園祭のこの面倒くささを知らないんだ。中学の文化祭と違って、高校の学園祭では様々な出し物が出る。食べ物、射的、お化け屋敷、その他もろもろ。それらを纏め、準備する一端を担っているのは間違いなく風紀委員で、そしてその過程が死ぬほど面倒くさいのだ。

はーやだやだ。深々とため息を吐いて、ふと気付く。羽炭がむん!と握り拳を作っている事に。え、ちょ、何あれかわいすぎない?俺に向かってしてくれてるんだよね?そうだよね?


「(あれ、なんか口が…)」

「(が、ん、ば、れ)」


ピシャアアアアン!!俺の中に雷が落ちた。


「どんどん案出してって!早く!ほら!なんなかないの!?」

「急にどうした!?」

「うるさいよ!やる気に漲ってんだよはよ出せ!」

「お、おう、じゃあ…」


急に張り切り出した俺をドン引きで見つめるクラスメイトなんぞいざ知らず。羽炭が!!応援してくれてんだよ!!頑張るだろーが!!
そして人間と言うのは、誰かが案を出せばおれも、私もと手を上げる生き物である。


「メイド喫茶!」

「(メイド喫茶…!?)」


ガッ!勢いよくチョークを黒板に押し付けたせいか折れてしまった。今、なんと…?え?何?メイド喫茶?
ほわんほわん、と脳裏に描くは羽炭のメイド姿。フリルがふんだんに使われた膝上のスカート。動く度に揺れてニーハイを留めるガーターベルトが見えるのはロマンでしかない。逆に、ロングスカートで清楚に纏めるのもいいかもしれない。長いスカートに隠れる足を暴き、まさぐってそれで…


「……あの、さ、我妻…」

「何よ」

「お前…鼻血やばい」


クラスメイトの指摘に鼻に触れると、べっとりと手に血がついた。あらやだごめんなさいね。
羽炭の視線がめちゃくちゃ痛いが、もぎゅもぎゅと鼻つっぺをして、深呼吸。


「ある程度案が出たので、投票したいと思います」


全員に机に突っ伏してもらい、順番に読み上げていく。まずはお化け屋敷。


「(ひぃ、ふぅ、みぃ…6人か)」


思いのほか少ない。まぁ、準備とか大変だしな。お化け屋敷の下に人数を書く。
タピオカ、フランクフルト、劇、射的、そして最後に…


「メイド喫茶」


ば!と挙げられた手の数を数える。ざっと13人。いずれも男。お前らはわかる奴らだ。
結果的には、圧倒的に票数が多いのはタピオカである。作るのも楽だし、流行りであるから選ばれて当然なのだろうけど、俺は何としてでもメイド喫茶に票数を入れなければならない、そう!それもこれも、羽炭にメイド服着せてご奉仕してもらうため!!
頭の中で配分と人数、分散を計算する。タピオカの人数を削りつつ、不自然にならない程度にメイド喫茶に数を回す。


「もういいぞー」


クラスメイトたちを起き上がらせた瞬間に湧き上がる動揺と喜び、そしてブーイングの声。


「てことで、一位はメイド喫茶でっす!」

「誰よメイド喫茶に投票したの!!」

「衣装とかメニュー考えるの大変なのに!」

「タピオカでいいじゃん!」

「ええいお黙り!決まったんだからメイド喫茶でいいだろーがい!てゆーか!着て!メイド服!」

「女子はメイド服の夢と浪漫を知らないんだ!」

「何で女子だけそんなの着なきゃいけないわけ!?それならあんたたちも着なさいよ!!」

「男のメイド服とかどこに需要があるんだよ!」


カーンッ!と鳴らされた女子VSメイド喫茶派男子のゴング。お互い負けるわけにはいかない仁義なき戦いである。わいわい、ギャーギャー、すっかり収拾がつかなくなった空気に、唐突にパンッ!!と手のひらが打ち付けられる音が響く。一瞬にして静寂に包まれた中、がたり、立ち上がったのは羽炭だった。


「それなら、もう一度投票しなおしてみるのはどうかな?今度は挙手制じゃなくて、紙に書いて集めよう。それでも一位がメイド喫茶だっなら、文句は言わない。どうだろう」

「まぁ、それなら…」

「じゃあ紙作るから、その間皆はもう一度何に投票するか考えててね。善逸、手伝ってくれる?」

「え?あ、うん…」


まずい。まずいまずいまずい。何がまずいって、このままじゃクラスの出し物がタピオカに決まってしまう。それじゃあ合法的に羽炭にメイド服を着せられない。どうする、どうしよう、どうにか羽炭の目を誤魔化して投票数を「善逸」はい。


「嘘ついちゃダメ」

「…はい」

「不正も、ダメ」

「は、い…」

「ダメだからね」

「羽炭ぃ…」


皆に聞こえないよう、小声で言う羽炭。どうやら彼女には全部筒抜けだったらしい。
悲しさと切なさに涙をこぼしながら紙を配る俺の夢は、儚く散る事となるのは数分後の話。

そして、どこから漏れたのかクラスが騒がしかった事、メイド服を羽炭に着せたくて投票数を不正した事が冨岡の耳に入りしこたま殴られた俺であった。





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風紀委員の立場を利用して好き勝手しだした善逸の話。
素敵なネタをありがとうございました!