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 #04






カラスが鳴く夕暮れ道をとぼとぼ歩いている私は早々に後悔していた。

いやだって、なんとかならないから竃門くんに泣きついたのに結局ノーヘルプで自分でどうにかしないとだもん。
なんて、思うけど我妻くんの気持ちは本当によくわかる。普通見えないものが見えること自体異常なのに、さらにはそれが自分だけに襲いかかってくるとか、本当に恐怖でしかない。我妻くんが怖がるのは決して間違いじゃない。

…ただ。


「私、本当に何もできないかも…」


とりあえずは家に帰ればお菊ちゃんがいるから、なんとかなるだろう。早く帰らなければ。そして城(布団)に閉じこもろう。


「ッーー!」


不意に、その場の空気が変わった。さっきまでやかましいほど鳴いていたカラスはいなくなっていて、いつもならこの時間帯は学生やサラリーマンの人たちで人通りは多いはずなのに今は私以外の誰もいない。
ぞくり。背中に悪寒が走る。

いる。今、後ろに。あいつが。
嘘、なんで、いつもは家の前に現れるのに。着いてきたの?いつから?私が誰かに相談したから?
わからない。何もわからない…!


「ッ…」


嫌な気配を振り切るように走り出す。多分、いや、捕まれば確実に終わる。逃げないと。今この状態では家には帰れない。頼りのお菊ちゃんもいない。
一人で、何とかしないと…!


「とりあえず、神社…!」


後ろからついてくる気配をひしひしと感じながら、まずはどこでもいいから神社に駆け込もうと思った。あーいう邪悪な奴は、神聖な空気が満ちる神社には入ってこれない。ここから一番近い神社…!
パニくる頭を必死に回してこの街の地図を思い浮かべる。


「マ…デ…ミエ、テル…ミ、エテル…」

「(ひぃぃいい喋った…!!?)」


ほぼ雑音に近い悪霊の声。それにたまげながらも足だけは動かすことをやめない。神社までもう少し、見えてきた鳥居に安堵して一瞬でも気を抜いてしまった。


「わッ!」


どしゃッ!
盛大に地面にころげる。打ち付けた体中が痛くてたまらないが、それらを全部気付かないふりをして立ち上がろうとした。


「、え…?」


ずり、体が後退した。振り返ると、あいつの長い髪の毛が私の足に絡みついていた。
う、嘘…!


「や、やだやだやだ…!!離して!!」


振りほどこうと足を振り回すものの、解けるどころか余計に絡まりついてきて気付けば髪の毛は太もも近くまで来ていた。
徐々に近付くそれ。引き摺られる度に全身が痛い。声を張り上げても誰も助けに来ない。


「だ、れか…!」


落ち窪んだ目がにったり、と細められた気がした。


「助けてッ…!!!」





「チュン太郎ッ!!」


突然目の前で赤が弾けた。それは一直線に悪霊の所へ飛んでいき、燃える。


「ギ、ガァァァアアアア…!!」


耳を劈くような鈍い悲鳴。何が何だかわからず燃え盛る炎をぽかん、と見ていると、背後から誰かに抱き上げられた。


「だッ、大丈夫鳩間さん!?」

「あ…我妻くん…!?なんで…!」

「あいつは炭治郎と伊之助がどうにかしてくれるから、今は早くここから逃げないと!!」

「ま、待って!待って我妻くん!どうして君がここにいるの!?」

「だって鳩間さん、助けてって言った!」

「!」

「俺悪霊とかほんっとめちゃくちゃ怖いし!祓い屋とか言うけど超弱いし!けど!鳩間さんは俺みたいに祓う力とかないのにあんな事言った俺を責めるどころか皆怖いからって気遣ってくれて…!だから…!」


ぎゅッ、と私の体を支える我妻くんの腕に力が籠った。


「俺に…!鳩間さんの事を助けさせて!!」


めっちゃ青い顔してて、涙で顔がぐっちゃぐちゃで、体中震えまくってて、男として大丈夫かとか色々脳内を巡ったけど。
それでも、真っ直ぐ前を見据える我妻くんの目は真剣で、すごくかっこいいって思った。








first ◇ end

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