#02
「竃門くん!」
チャイムがなった瞬間に竃門くんの席に猛ダッシュした私は勢いを殺さずにそのまま土下座した。
「ちょおッ…!?鳩間さん何して…!立って立って!女の子が土下座なんてするもんじゃない!」
「いいや私は竃門くんに謝らなければいけないの!!」
「謝るって何を…」
「こ、これ…」
おずおず。ハンカチに包んだ物を竃門くんに差し出した。無残にも粉々に砕け散った竃門印の数珠を見た彼はぎょッと目を見開いたあと、ほんの少し顔を青くして私と目線を合わせてくれた。
「こ、粉々じゃないか!一体何があったんだ!?というか、大丈夫なのか君は!!」
「おわッ…!ちょ、近い近い!見ての通りピンピンしてますとも!…まぁ、一瞬死を覚悟したけど…」
「…この数珠はちょっと特別なんだ。それがこうも砕けたとなると…。鳩間さん、今回君が遭遇した奴、かなり危ないかもしれない」
神妙に呟く竃門くんに私は全力で顔を青くした。マジか。かなり危ない奴なのか…てことは、え?竃門くん曰くこの特別な数珠をもってしても追い払えるかどうかわかんない上に、下手すれば…死…!?
「だ、大丈夫!絶対に鳩間さんを連れていかせないし、これ以上好き勝手させやしない」
「竃門くん…!」
なんて男前なんだろう…!発言が心強すぎる…!なんて言うか、竃門くんってこの人なら絶対にしてくれそうって言う謎の信頼感が芽生える。この人なら、この人が言うのなら大丈夫って。
誰に対しても菩薩のように優しいし、対等だし、女子に人気なのも心底頷ける。
危うく惚れそうになったわ。
「…でも、俺1人じゃ多分無理だ」
「え」
「適任がいるんだ。ちょっと頼りないかもしれないけど、腕は確かだから安心してくれ」
じゃあ今日の放課後に。
そう言い残して去って行った竃門くんの背中をぽかん、と見送る。
適任?どういう事だろう…私みたいな人がまだいるって事…?
ざわざわと胸が騒めく。これは喜びか、それとも緊張か。それは放課後になるまで私には知る由もない事である。
first ◇ end
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