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 #15





とあるクラスで女生徒が突然血を吐き倒れた上に、窓ガラス一面に夥しいほどの赤い手形がついたと言う怪奇現象は瞬く間に全学年に広まった。
その出来事をすぐそばで目の当たりにした少年…竈門炭治郎は、昼間に救急車で運ばれて行ったクラスメイトの安否をそわそわとしながら気にしていて、それを彼伝いに聞いた我妻善逸は顔面を蒼白にして炭治郎に詰め寄った。


「鳩間さんから悪霊の匂いがしたってどういう事だよ…!」

「一瞬、ほんの微かに匂っただけだから確信はなかったけど、鳩間さんの体中にたくさんの指の跡がついてるのを見て確信したんだ。…多分、子供の…」


「子供…」その言葉を聞き、善逸はより一層顔を青くさせた。子供の霊と言うのは、周囲に満ちる負の気配を吸い込みやすく、子供ゆえに“寂しい”と言う感情がひどく強いものである。だから取り憑いた相手に執着し、引き剥がすのはとても難しい。

普通ならば周囲の負の気配を吸い込めば吸い込むほど悪霊の気配が大きくなるのだが、今回杜羽に取り憑いた悪霊は、子供のわりに気配を隠すのが上手かった。
だから、悪霊の音を聞き分ける善逸や匂いでわかる炭治郎、見えないけれど感覚的に捉えている伊之助は、杜羽に子供の悪霊が取り憑いている事に気付かなかったのだ。


「俺…昨日鳩間さんと一緒にいたんだ…。一緒に遊んで、会話して、何かあったら言ってねって…」

「善逸…」

「なのにッ…!炭治郎から聞くまで鳩間さんがそんな事になってるの知らなくて…!何が友達だよ!全然…!助けられてねぇじゃんかよ!」


きっと杜羽自身も自分が取り憑かれているなんて知らなかっただろうに。誰よりもそばにいて、悪霊の音を聞き分けられるアドバンテージが全く活かされていなかった事を善逸はひどく悔やんだ。
お通夜みたいな空気が流れる中、今まで無心に菓子パンを頬張っていた伊之助が唐突に口を開いた。


「ぐだぐだぐだぐだうっせーんだよ!!泣いたって悔やんだって過ぎた事はどうにもできねーんだよ!べそべそする暇あるんなら、これからできる事を考えりゃいいだろうが!!」

「伊之助…」


なんだかんだ、伊之助も杜羽の事を気に入っていたのだ。親分と呼びついてまわり、お菓子や菓子パンをわけてくれる杜羽の事を。
思わぬ伊之助の言葉に少しの間呆けていた善逸と炭治郎だが、さっきまで胸に燻っていたものが少しずつ消えていくのを感じた。


「そう、だよな…まだ手遅れじゃない、まだ間に合う…!」


むしろ杜羽に、知らない間に取り憑いていたものの正体がわかっただけでも万々歳だと、善逸は考え直した。何も情報がないまま対峙するより、何か一つでも情報があった方がそのぶん対抗策を講じられる。


「鳩間さんは病院に搬送されたんだよな?」

「あぁ。確か、駅前の総合病院だったはず」

「だったら、炭治郎、俺が言う物を用意してじいちゃんとこに持って行ってくれない?じいちゃんには話通しておくからさ」

「わかった」

「伊之助は炭治郎を手伝ってやって」

「はん、子分の頼みなら仕方ねぇな」

「…じゃあ、頼んだぞ」


その一言を皮切りに、各々はやるべき事をするために散らばった。




その同時刻。とある病室から一人の少女が消えた。真っ白だったはずの病室は誰のものかわからない赤が飛び散っていて、開けっ放しになっていた窓から入ってくる風がカーテンを虚しく揺らしていた。

そして壁には赤黒い血で「カエセ」と、ただ一言が描かれていたそうだ。








first ◇ end

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