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自称潔子の嫁



春。
出会いと別れの季節。

街はセンチメンタルを歌うJポップで溢れて、かすかに桜もほころび出す。

今日は待ちに待った新学期だった。
それなのに。

「さいってー。私はこんなの認めないわ。やり直し!」

私の心はこれからの1年間を想って憂鬱だった。
どういうことだ。こんなのってない。最低だ。この怒りを誰にぶつければいいの。

「いやいや、ミョウジー、朝からそれしか言わねーのな。クラス替えはやり直しとかねーべ」

喚き散らす私を宥めるように言うのは菅原。去年はクラスが違かったけれど、まあ友達かな。って程度には話したことのある仲だ。

「なんでこうなっちゃったんだ。ちゃんと先生達には念を押したのに」

彼は隣の席に座って、呆れたように笑う。
私は至って真面目だというのに。

「まあ確かに、ミョウジは清水とめっちゃ仲良かったもんなー」

頬杖をついたその腕は、色白ながらきちんと筋肉がついており、彼も運動部できちんと頑張っているんだな、なんて思った。
まあ、どうでもいいんだけどね。

「潔子のいない教室なんて。私は明日から何を楽しみに生きていけばいいんだ」

そう。私は大好きな潔子とクラスが離れてしまった。それによりこれから続く拷問のようななんの救いもないクソみたいな高校生活を想って嘆いていたのだ。

「えー、そんなにかよ。そんなに会いたいならもうバレー部入ればいーべ」

菅原はへらへらと笑う。
いつもそうだ。爽やかなんて言われているけれど、私はこいつのそういうところがたまに腹立つな、と思ってしまう。

「私が他人の面倒を見るなど片腹痛いわ」

「はは、確かに」

自分で言うのはなんとも思わないのに他人に言われると腹がたつのはどうしてなのか。

「まあ、休み時間とお昼休みと放課後会うからいいけど」

「うわー。ほんと大好きだなー」

そんだけ会っても足りないのかよ。なんて菅原は言うけど。足りないよ。
私は大好きな潔子のことを四六時中眺めていたいし、潔子が発する全ての声を録音したい。
あわよくばお持ち帰りしたい。

「これからは潔子と過ごす一瞬一瞬を大切に生きるわ」

「うーん。もーそーしな」

菅原はまたへらへら笑う。
馬鹿にされているのかもしれない。

でも、人からなんと言われようが私は潔子を大好きだし、彼女の隣で笑う権利は絶対に誰にも渡さない。

とりあえずHR終わったら潔子の教室行こっと!


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