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Bachicul KIMLASCA=LANVALDEAR
23day,Rem,Rem Decan





「ん、ぅ……ふあぁ……ねむ……」



 窓から差し込む朝の眩しい日差しに、ベッドの中の人物が身を捩った。枕に顔を押し付けるて目覚めるのを拒むが、けたたましく鳴る音機関のベルの音がそれを妨害し、リアを夢の世界から浮上する手助けをする。

 三十秒程ベッドの中で粘ったリアだったが、流石に耳元で鳴り響くベルの音は堪えたのか、ゆっくりと起き上がり手を伸ばしてそのベルを止めた。



「……おはよう、」



 枕元に置いてある写真に、微笑みかける。写真に写っている二人の子供は、相変わらず何時もと変わらない、太陽のような明朗な笑みを浮かべている。リアはベッドから這い出て手際よく着替えると、洗面所に向かい身なりを整えた。顔を洗い、長く伸びる銀糸の髪をとかす。今日は予定があるからと、軽い化粧を施す。鏡に映った自分に一つ頷いてリビングに戻り、軽い朝食をとってから店へと向かう。

 店と言うのはリアが住居の一階を改築して経営している花屋の事だ。色とりどりの花が並ぶそこは今日も変わらず、のどかな雰囲気を醸し出していた。
 バチカルの街角の一本奥、日当たりは良いが人通りもまばらなところにありながら、リアの店は意外にも繁盛している。その理由の一つとして、店の柔らかな雰囲気がある。その雰囲気を気に入った客たち、特に子供や老人たちが何かと立ち寄るのだ。そしてもう一つに、リアの店には貴重な花の種が揃っている、という理由がある。その為、一部のマニアや貴族からの需要が高いのだった。


 しかし今日は、定休日。


「本日定休日。またのご来店をお待ちしております」と書かれた札をドアにかけて、鍵をしめる。



「よし、」



 壁にかけてある予定表を確認して、レジ近くに用意してある暖色系の花で小さなブーケを一つ作る。そしてもう三つ、今度は簡素な花束を作ると、それらを抱えてリアは裏口から出た。
 すきま風に揺れる予定表には、赤字で『シュザンヌ様に』と記されている。

 外に出ると、のどかな風がリアの頬を撫で、首に巻いたスカーフを揺らす。抱えるブーケもふわりと揺れて、花の優しい匂いが鼻孔をかすめる。
 喜んでくれるといい。好意を抱いている彼らのことを考えながら、足取り軽く目的地へと向かう。




 まさかこれから思いもよらない事件に巻き込まれていくことになるだなんて、考えもしないまま。



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嵐の前の静けさ。

20130205 加筆
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