*****漫画はお好きですか?

※真面目不良×漫研部長











ここら一帯の地域に生息する不良や族の奴らの中で、『桐生組』というヤクザの名を知らない奴はいない。いや、一人知らない人がいたがその説明は後回しにしよう。


――俺、桐生 宵(キリュウ ヨイ)は、そのヤクザの中で一番温厚な桐生組の次男として生まれた。幸いな事に既に年の離れた兄がいたから跡を継ぐとかそんな問題は起こらなかった、が。

中身は平凡で喧嘩は苦手だったのに、幼い頃から父似の長身と目つきの悪さ、おまけに無口なのを誤解されて町中の不良に目を付けられるようになり、相手をしてたら本当に不良になってしまっていたのだ。
望まなかったとはいえ、そういう世界に足を突っ込んだ以上簡単にやめられるとは思わなかった俺は、周りの不良仲間達に合わせ、それはもう酷い生活をしていた。煙草、万引き、飲酒、カツアゲ――自主的にやることは無かったが、その場にいる以上は同罪。やりたくなくてもやらないとなんて悲劇ぶった言い訳を頭に入れて、毎日虚ろな日を過ごしてた。
それが半年過ぎた、ある日。

「止められなくて辛いならさあ、ちょっとでも楽になろうって考えれば―?」

いきなり現れたその人は、一発で俺の心を見抜いて、そう告げた。そして呆然とする俺をよそに、俺のいたチームを潰して俺をチームに引き抜いたのだ。
なんで、と呟く俺に初対面とは思えない笑みでその金髪の男は言った。

「いやあ、丁度チームに跡取り候補が欲しかったんだよねぇ。君、あんまり悪いこと好きじゃないでしょ?前のとこよりうちの方が向いてるよ」

あんま悪いことしないしねぇ


――そう笑ったその人は、不良らしくない不良で有名な松川広樹だった。


それから、一年。



最近松川先輩は一年越しの恋が実ったらしく、やけにハイテンションだ。尊敬する先輩に恋人が出来たのは嬉しいが、俺は恋というものをした事が無いので嬉しさがイマイチ解らない。
…一目惚れとか、未知の世界。



だった、のに。




◆◇◆

「き、桐生くんっ!!」
「並山先輩?どうしましたか」
「……お前、ほんっと見た目と中身合って無いよな。でかいし、三白眼だし、メッシュ入れてるくせにちゃんと先輩に敬語使うし」
「メッシュについては偏見だしそんな三白眼じゃありません」



はあ、と溜め息を吐く。松川先輩と会ってから大嫌いだった悪い行為を強制されず楽だったが見た目を誤解される生活は未だに続いている。
女子には恐れられ、男子からはかしづかれ、サラリーマンからは半泣きで見られ、近所の子供には大泣きされる。…保育士志望の自分としてはかなりショックだ。しかし何故か主婦の人達には可愛がれるのが不思議だが唯一の救いと言って良いだろう。


そんな俺に話しかけて来たのは、前に一度話した先輩だ。…確か、三年生。

「実は俺の友達がマンガ研究部の部長なんだけどこの前部員抜けちまったみたいでさ…、元々人数少ない部活だから廃部寸前らしくて、…だから幽霊部員でいいから入ってくれぇっ、頼む!」

「………」

ぱんっと両手を合わせ頭を下げられる。そんな俺は仏じゃないんだから願わなくたっていいのに。

「部長も来てんだ!ほらっ、御坂!」

「あ、ああ!!」


ひょこっと出てきたのは、少し気の弱そうな黒髪の男で。
最初はおずおずとしながら下を向いていたがやがて意を決したように、バッと顔を上げて俺の目を見て、視線合わせた。


「き、桐生くん!!」


決して、イケメンとは言えないその平凡な顔立ちに、何故か胸が鳴った。

「あの、幽霊部員とか言ったけど…そのっ、漫画に興味あるなら、君に、入部して欲しいんだ…!」

「…なんで、俺を?」


ああやばい。胸が五月蝿い。身体が、熱い。

「…君、今年の一年生の中で一番美術の成績が良いって、並山に聞いて…どうせなら、絵がうまい人に頼みたいんだ…!あ、いやなら、幽霊部員でもいいんだけど…っ、えっと」


おどおどする御坂先輩が恐ろしい程可愛く見える。守ってあげたい、抱きしめたい。なんだこれ。

「とにかくっ、マンガ研究部に入りませんか?!」



あ、わかった。




「はい」


「「うそぉ!あっさりっ!?」」



「…その代わり」

「へ?」


がしっと御坂先輩の手を握る。




「付き合ってください」



これが、恋か!!



鹿


**

桐生 宵
きりゅう よい
ヤクザの次男
凶悪人相
根は真面目



三条芽 御坂
さんじょうめ みさか
平凡、地味
のほほんなチキン
マンガアニメオタク



20100422up


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