「恋の病ですね」
「なんと」
「貴女は僕の事が好きなようです」
「それはこまりました」
「困りましたね。しかも僕も貴女の事が好きです」
「もっとこまる」
「何故ですか?」
「そんなことをいわれるともっともっとむねがくるしくなります」
「それは大変だ。ですがお薬は出せませんねぇ」
「なぜですか。あなたおいしゃさんでしょう。くるしいのはいやです」
「出したいのですが、生憎恋の病に効くお薬は無いのです」
「ではかいはつをいそいでください」
「僕は医者ですが薬剤師ではありません。残念な事に、世界中から名の知れた薬剤師を集めても薬が完成することはありません。悔しいでしょうねぇ」
「てめぇ!」

「というか正直僕は医者じゃありません」
「なんと。ほんもののおいしゃさんはどこですか」
「そこに転がっています」
「ほんとだかわいそう」
「気にしなくて結構です。ここは病院なので後で誰かが適切な処置を行ってくれるでしょう」
「でもほっといたらしんでしまいます」
「そうですねぇ。ですがこう考えるのはどうでしょう。世の中には何億人もの人間がいます。一人くらい白目を剥きながら血を吐いて倒れていても問題ないと」
「なんかそんなきがしてきました」
「でしょう」

「ところで注射は好きですか」
「きらいです」
「それは残念だ。恋の病にはよく効く注射があるんですけどねぇ」
「でもあなた、おいしゃさんじゃないんでしょう」
「医者でないと注射が打てないわけではありませんよ。それに、針を刺すような注射ではないので男性なら誰にだって出来るんです」
「針じゃないんですか。よかった」
「ええ、最初は痛いかもしれませんが慣れてくるととても気持ちいいですよ。それはもう自我を保てないほど! そして胸の痛みは穏やかなものとなるでしょう」
「えぇぇそんなにですかどきどきします。でもなおるならすぐにでもおねがいします」
「おや、せっかちさんですね。ではすぐに注射を致しますのでそこのベッドに足を開いて寝転がってください。白い注射液を注ぎ込んであげますからねぇ」
「はあい」





「っていう夢を見たんだけど」
「くだらねえ」