「トーマス、おはよう」
「おそい」
「ごめんね」
「すごく待った」
「寂しがらせたくて」
「お前は俺をこんなひろい部屋にひとりで放っておいて心がいたまないのか」
「いたむけどそれがまたよくって」
「どうしようもねえな」
「私もそうおもう」
「お前は俺が寂しがってるのと喜んでるのどっちがいいんだよ」
「喜んでるの」
「じゃあちゃんと早く来い」
「わかった」


「トーマス、聞いてるの」
「…………」
「聞いて」
「…………」
「……私を無視するの」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……なんだよ、なんか言えよ」
「…………」
「おい」
「…………」
「……お前は俺のこと無視して心がいたまないのか」
「少しいたい」
「おぉ……」


「トーマスってきもちわるい」
「ああ?」
「常日頃から思ってたけどトーマスきもちわるい」
「……なんだよ、突然」
「べつに」
「お前はそんなに俺のこと罵倒して心がいたまないのか」
「なんかこう、耳の穴に舌入れられるようなゾッとするタイプのきもちわるさ」
「俺はそれいやじゃない」
「私もそれいやじゃない」
「問題ないな」
「問題ないね」


「トーマス、でかけよう」
「どこにだよ」
「トーマスがいた世界にいってみたい」
「俺はいきたくない」
「なんで」
「俺はこれでも極東エリアのデュエルチャンピオンだ」
「知ってる」
「お前はファンに囲まれてちやほやされる俺を見て心がいたまないのか」
「べつに」
「ほお……」
「このビデオを地上波で放送するだけのことよ」
「やめろ」
「生中継でもいいのよ」
「やめろ」


「トーマス」
「ああ?」
「とむくん」
「なんだ」
「とむちゃん」
「しね」
「ヨンさま」
「誰だそれ」
「Wさん」
「だから、なんだよ」
「呼び名がいっぱいあるって楽しいね」
「四番目は俺じゃねえ」