とむくんが教えてくれた、くちびるとくちびるをくっつけるあそび。わたしもとむくんも、最近はそれがすごくおきにいり。この間みたテレビでは、すきだとか、あいしてるとかいいながらくちびるをくっつけてたから、今回はわたしもその真似をして、とむくんにあいしてるって言ってからくちびるをくっつけた。うそじゃない。わたしはとむくんをあいしているもの。いつもいっしょにいてくれて、辛いことがあったらなぐさめてくれて、時々いじわるだけど、それでもやさしいとむくん。だいすき。

「……ほんとう? ほんとに、俺のことがすきなのか?」
「ほんとう! とむくん、だーいすき!」

 いきおいよくぎゅっと抱きつくと、とむくんはしっかりと受け止めてくれた。とむくんが少しふるえながら、ゆっくりとわたしの背中に手をまわす。みみもとで鼻をすする音がきこえて、わたしは顔をあげようとしたけど、ぐっと頭をおさえつけられて、とむくんの顔をみることができなかった。

「とむくん、ないてるの?」
「ば、ばか、ないてねーよ!」
「ふふ、わたしね、くちびるくっつけるのもすきだけど、こうやってぎゅってするのもだいすきだよ!」

 思えばこうやってぎゅってするのも、とむくんが教えてくれたことだった。すこし遠くのこうえんまで行って、さむさに耐えながらかえった冬のこと。ぎゅっとくっついて、わたしをあたためてくれた。過去をふりかえればいつだってそこにはかならずとむくんがいる。

「俺も、なまえのこと、その……だ、だいすきだ」
「わたしもとむくんだーいすき!」

 いつまでも友達でいようね。
 そう思っていたのは私だけで、彼がもっと先を望んでいた事を知るのは、ずっと先の事。あの時私は、彼の言う「愛してる」の意味も、「大好き」の意味も、何一つ理解できていなかったのだ。