「ふざけんなテメェ、菓子やっただろうが」
「え? ……ああ、うん。貰った」
「悪戯はナシだ、どけよ」
「いやよ」

 くつくつと喉の奥を鳴らして、仰向けになった俺の腹の上で女は笑う。何がそんなに楽しいのか。襟元を緩めて、露わになった俺の胸元を開いた掌が弄る。力仕事とは無縁だと感じさせるような、女らしく柔らかい手だった。今からこいつが何をしようとしているのか、俺が何をされるのかなんて、今までの経験からすれば安易に想像出来る。俺だって満更ではない。つい先ほど菓子を渡した時だって、実は少し後悔したのだから。俺から受け取った黒と紫の紙袋を胸の前で抱き締め、ありがとうと笑うなまえは可愛らしかった。それはそれは、今俺の上で笑っているなまえとは別人だと思える程に。

「今からトーマスは何回射精するのかな」
「一回もしねえ。どけ」
「汚した数だけ太腿に正の字でも書こうか」
「聞いてんのか。趣味わりーな、男にそんなことして喜ぶなんてお前変態なんじゃねえの」
「失礼ね。お菓子くれたお礼なのに」
「はん、だったらもっと俺の喜ぶことしろよ」
「何言ってるの、今からするでしょ」

 どうやら何を言っても無駄なようだ。俺はいつも折れるのが早い。こいつの前ではどんなに踏ん張ろうと最終的に折れなくてはいけないことはもう既に理解している。それでも抵抗をやめないのは、彼女が抵抗する俺を暴くのが好きだからに他ならない。熱くなった頬に彼女の手が這う。悪戯に近いそれを、彼女から礼として貰えると言うのなら、俺は身を任せるだけだ。