猫 | ナノ
(『小説カキコ』にて掲載。2009/12/05 10:15。)



―――買い物を済ませ、家に帰る。
その帰り道、暗い夜道を歩いていると、
数十メートルほど先の方で、黒いモノが飛び出してくるのが見えた。

          猫だ。

私は立ち止まった。
私は猫が大嫌いだ。きまぐれで、不吉で。
もし私が通る時にまだ猫がいれば、蹴ってやろうか。
猫かとおもったものの、それは二本足で立っていた。
どうやら人のようだ。
暗がりの中、僅かに外灯があたり、みえる。
鈍く、ぎらりと光る、歯。
暗い中、更に暗い、黒い、服。
二本足で立っていることと、しっぽが生えていないことを除けば、猫にしか見えない。
そのどこか・・・なぜか惹かれる姿に、思わず近寄ろうとした。
じゃり。私の足音が響く。
すると、それはよく見ることもかなわないうちに、
何処かへ逃げていった。
追いかけていきたい、衝動。不思議だ。
私はその気持ちを抑え、諦めて家へ。
いくらなんでも人を追いかけるわけにはいかない。

家は、もうすぐそこだ。
「ただいまー。・・・誰もいないの?」
いくらただいまと言っても、誰も返事をしない。
灯りもつけていない。
さっきから、靴下が何かに濡れていて気持ちが悪い。
灯りをつける。
すると叫び声とも奇声ともわからぬ音が聞こえた。
誰の声。
誰の音。
正体不明の音は、全く聞いたことのない音。
でも、どこか聞き覚えがあって。
赤、黒、黒、赤、赤、赤、黒、黒黒黒黒・・・。
私の音。私の音。
鼓動、呼吸音、喉から出る音。
・・・さっきの人は。
やっぱり、猫だったんだ。
私の大切な人の命を、奪っていった、泥棒猫。
私の、双子の妹を殺した、獣。
私の悲鳴は近所に響き、しばらくして警察が駆けつけた。


私は悔しくてたまらなかった。
なんで、妹が殺されたの。
・・・・・・なんで、私は捕まっちゃったの?
絶対に、ばれないと思っていたのに。
妹は、私が殺すはずだったのに。
誰が殺したの・・・?
ああ、ああ。


私は、殺人罪と死体遺棄で捕まった。


今は、警察にいるわ。

とてもじゃないけれど、居心地が悪い。

ても荒れちゃったしね。

もう限界。

くるしい。

やむことのない、刑事の追及。

しずかにしてほしいわ。

いっぺんに色々言われても、困るじゃないの。
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