約束 | ナノ
『約束』

とある場所、とある時間で。
僕らは約束した。
この世は戦乱に満ち溢れていて。
僕らも戦力となり得るが故に、戦争に参加しなければならなくなった。
能力者、だから。
そうして僕らは・・・僕と彼女は、夕日を背景として、土手の上で約束する。
「それじゃあ絶対に死んじゃダメだよ!絶対だからな!」
僕が念を押すと、彼女は眉を吊り上げて、自信満々を取り繕って笑って見せた。
「あんたこそ死ぬんじゃないぞ〜?いつもみたいに、護ってやれないんだからね!ぼーっとしちゃダメよ?」
「そ、そんなに助けられた憶えないし!そーいうこというなよな!」
「ふふふ、まあいっか。それじゃあ、指切りげんまんしよっか!」
「うん!」
僕らは互いの小指を寄せ合わせて、ゆっくりと絡ませた。
「「ゆーびきーりげーんまーんうーそ吐いたら針千本呑ーます、指切った♪」」
同時に小指を離して、同時に笑顔を作った。不安で押しつぶされないように。
「それじゃあ、また今度!戦争が終わったらこの土手にね!」
彼女は笑っているのだろう。けれども、夕日の逆光で僕からその表情はわからない。
でも、声だけは笑っている。
「・・・うん!」
僕は大きく頷いて見せた。
「それじゃあまたね!」
走り去っていく彼女を見て、僕はどことなく悪い予感がした。
もう会えないんじゃないかって。
「おっ、・・・おい!」
結構距離が開いている。僕は大声で叫ぼうとした。あまり声は出なかった。
彼女が気付かなければ、僕はあきらめようと思った。でも、彼女は気付いてくれた。
「ぜ、絶対に約束守れよな!絶対だぞ!!」
「ぷっ・・・わかってるよ!そっちこそ約束守ってよね!絶対に!!」
僕らは少しの沈黙の後、距離をものともしないくらいの大声で笑いあった。
涼しい風が彼女の髪をさらさらと撫でる。僕の前髪が視界に入って、彼女の姿が少し見えなくなる。
どちらからともなく、言う。
「それじゃあ、」
「また、」
「「会おう。」」
最後まで笑顔で。最期まで僕らは繋がっている。
約束を、果たす為に。
・・・離れた小指が、寂しい。
でも、また約束を交わすその日まで。
僕は握り拳を作って、小指の約束を埋めた。



あの日、約束した土手。
僕らはちゃんと土手にいる。
「あ、痛っ。」
「なにやってんの、ダメじゃないか。」
「大丈夫、まだまだいけるって。」
「もう、よくそんなんで戦争に行けたね!」
「ははは・・・今、何本目だっけ?」
「・・・何本飲ませたかな。」
「針。」
「千本。痛くは無いよね、死んでるんだもの。
お腹から針が突き出ちゃった。やり直しやり直し。」
彼女は約束を破った。僕は迎えに行った。あの日の約束を果たす為に。
指きりげんまん、嘘吐いたら針千本呑ますって。約束したよね言ったよね確認したよね。
それじゃああと三百二十四本、がんばって約束はたしてね。
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