夢 | ナノ

ああうっせえうざってえ。
いちいちいちいち学校のこととか進路とか口出ししてきてよ。
しかも殴りやがって。
ああむかつく。
口うるせえのは世間一般では大抵オフクロだろーけど、
オフクロはオレが小せえ時に死んじまったからオヤジがうるせえんだ。
ああむかつく。
あいつの大事なもんでも腹いせに壊してやろうか!?
なにが大事なんだ?結婚指輪か?車か?それともレアな鉄道模型のコレクションか?
手当たり次第に壊してみるか?
まあ今日は疲れたから明日壊してみよう。
「何処へ行くんだ! もう真夜中だぞ!」
うるっせえ声が背中にぶつけられる。
オレは適当に悪態ついて、ドアノブを乱暴に回す。


ゲーセンでもいこうか。
それともその辺のヤツとつるんでみようか。
オレが暇潰しの方法を考えていると、どこかから悲鳴が聞こえた。
なんだ……?
声のする方へ行くと、そこでは俗に言う『オヤジ狩り』なるものが行われていた。
楽しそうに怯える中年のオヤジを殴る蹴る、金を要求する。
なんでもやりたい放題だった。
「おい」
気晴らしにこいつらをぶん殴ってやろうと思った。
相手のチンピラ達がオレを睨みつけてくる。
ぶん殴ってやった。蹴ってやった。……少しはすっとしたかな。
チンピラ達は古臭いにおいのする捨て台詞を吐いて、何処かへ消えた。
「ありがとうございます……!」
足元から野太い声がした。
さっきのおっさんか。
「別にオレぁ気晴らしに殴っただけだよ。
それよりとっとと病院でも行った方がいーんじゃねえの?
ひっでえケガだし、あんたまた狙われそうだし」
オレがそう言うと、おっさんは身なりを整えて笑った。
「実はぼくはちょっとした神でして。
なにか小さな願い事ならお礼にかなえましょう。
独裁者になるとかはできませんが、ある程度の望みなら。」
このおっさん頭がおかしいのか?
そうは思ったが、こういうヤツは下手に刺激したりしない方が良いんだろう。
オレは思いついたことを言ってみた。
どうせ叶いやしないさ。もうどうでも良いし。
「親父の大事なモン、壊してくれ」




オレは壊れた。




……し、……貴志!誰かが呼ぶ声が聞こえる。
「うわああっ!?」
ぼくは飛び起きて、辺りを見回した。声の主は、心配そうにぼくの顔を覗き込んでいる。
「貴志、大丈夫か? ひどく魘されていたぞ。怖い夢でも見たか?」
おとうさんだった。よかった、夢だったんだ。
ぼくはおとうさんに悪口言ったりしないし、死んでも無い。
ぼくは泣きながらおとうさんの温かい胸に顔をうずめて、静かに夢の内容を話した。
おとうさんはやさしく頭を撫でてなぐさめてくれた。
よかった。本当に良かった。夢でよかった。
そう、夢。けれどもそれは、






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