九十臨 | ナノ


九十九屋真一、という名の人間がこの学校にはいる。らしい。
と、いうものの、確かに在学しているはずのその人を誰も見たことがないのだという。教師たちですらその存在については己の無知を隠すように揃って口を閉ざすのだというからそれはそれは相当なものだ。
この学校で奴のことを知っているのは俺一人なのではないか。そう思ってしまえる位には、奴の姿はあまりに透明だった。

「九十九屋。」

呼べば振り替えるその姿は一般人そのもので、こいつがこの学校のほとんどを掌握している、あの実体のない生徒会長九十九屋真一その人だということに、一体だれが気がつくというのだろうか。

「どうした折原、また難しい顔をして。」

腹でも壊したか。
相も変わらずのいけ好かない笑みでこちらを見やる九十九屋。

「…別に。ちゃんとそこにいるのかと思って。」

「なんだそれ。」

そうやってこの言葉に含まれた意味がわからないでもないだろうに、しらばっくれる様が大嫌いだった。

「…九十九屋。」

まるですべてお見通しだというかのように目を細めて笑うその姿に、普段では考えられないくらいに感情が振り回されて。
…いなくなるなよ何てそんな甘ったれたこと、とてもじゃないが言えなかった。



それがどれだけであるかを知っている


――――
お待たせいたしました!
なんだかあまり先輩後輩という点がいかせていませんね…申し訳ないです。
リテイクも受け付けておりますのでお気軽にどうぞ!

それでは、リクエストありがとうございました!
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