2 | ナノ
「それで。俺はこのままどこに連れていかれてしまうのかな?」
「人を誘拐犯みたいに言うな!」
池袋の喧騒を二人連れだって歩く。
シズちゃんに会うのはご遠慮願いたいので出来れば新宿かどこかが良かったのだか、今横をふらふらと歩いているこいつが嫌がったのであえなく却下となってしまった。
ちなみに今なぜ手を繋いでいるのかというと、この平日の真っ昼間とは思えないような人混みの中で異様に存在感のない、日頃の生活習慣が祟ってあっちへふらふらこっちへふらふらしているこいつとはぐれないようにということで決して深い意味はない。念のため。
「…お前どっか行きたいところとかないの。」
「んー?俺はお前がいるならどこでも良いよ。」
ふわりと、九十九屋が笑う顔が見えて、ほぼ反射的に前を向いた。
俺が九十九屋を引っ張っているような立ち位置だから、これで九十九屋の顔は見えなくなったわけだが、後ろでくすりと笑う微かな声が聞こえて少しばかり負けたような気持ちになった。
「…耳、赤いぞ。」
「っうるさい!」
そうやって後ろを気にしないように前方に視線を固定すると、ここ最近の曇りがちだった天候が嘘のように太陽が低く顔を覗かせていて、黄昏時という名の通りにうまくこの顔をごまかしてくれないものかと思う。
「そうだなそれじゃあ、たまには外食でもするか。」
くん、と。
いつのまにか真横に来ていた九十九屋に逆に手を引かれ、思わずつんのめる。
「っおい、九十九屋!」
そうやってバランスを崩した俺をさりげなく支えるところだとか、決して俺が傷つくようなことは言わないところだとか。
…反則的にずるいと、いつも思う。
――――
我が家の臨也さんは九十九屋さんのこと好きすぎるなとしみじみ思ふなり。