Hello My Brother! | ナノ
「イザ兄こんばんはー!」
「晩(こんばんは)……。」
来客を告げるチャイムが鳴り響いて、そうして備え付けのモニターを覗き込めばそこには幼い頃から嫌というほど見てきた二つの丸い頭。
「……何しに来たお前ら。」
正直に言って俺はこいつらがとても苦手だ。
うまく向こうのペースにのせられてしまわないように嫌な顔を隠しもしないで言い放つが、返ってきたのは二人の楽しそうな笑顔だった。
「相変わらず冷たいねイザ兄は!」
「冷…駄(冷たいの良くない)……。」
口々に好き勝手なことをのたまって、こちらの都合などお構いなしに部屋の中に入っていく無礼者。兄妹だからってなんでも許されると思うなよお前ら。
「ふざけるな出てけ。」
俺の横をすり抜けていこうとする頭を制して思いきり外へ押し出す。
さすがに男の力には勝てないようでおとなしく押し出される二人。
…ん?おとなしく?
「…っうわ!?」
ガンッと。
にぶい音が辺りに響いた。
九瑠璃と舞流が両脇から飛び付いてきて、そうしてバランスを崩した。
実の妹に押し倒されるなんて洒落にならない。
「っお前ら…!!」
なんとか引き剥がそうととりあえず舞流の頭をつかむが、当の本人はいたって楽しげな表情でからからと笑っていた。
「イザ兄涙目ー!」
「兄…愛(イザ兄かわいい)……。」
「うるさい!生理現象だ!」
誰だって痛ければ涙くらい出る!
あまり、というかほとんど効果はないとわかっているが、それでも最後の抵抗とばかりに睨み付ける。
…別にこれが本当に最後の抵抗っていうわけではない。決してない。断じてない。
「赤(顔赤い)……。」
「イザ兄プライド高いからね!」
くっそこいつらどうしてくれよう。
なんて次の対処法を頭のなかで組み立てていると、不意に顔に影が差してそうして、
「……っ!?」
「んー…。やっぱりしょっぱいね。」
ぺろりと舌が目元に触れて、痛みによって滲んでいた涙が掬い上げられた。
「っな…!離せこの変態姉妹!!」
そうだこいつらは変態なんだった。
ぞわぞわと背中を粟立たせながらそんな今さらなことに気づいた。
近親相姦とかそんなこと全くもって気にしないような、そんな奴らだったんだ。
「お前ら頼むから離せ…!!」
半ば自棄になって普段なら決して言わないような言葉を叫ぶように吐き出すと、九瑠璃と舞流は待ってましたとばかりにニヤリと歯を見せて笑った。
「じゃあイザ兄ごはん作って!」
「……………は?」
…ちょっと待てこいつら何て言った。
こんな展開になるときは大体なにか物をねだられていたから、今回もそんなことだろうと思っていたが、飯を作れって?
「母…味(おふくろの味)……。」
「そうそう久しぶりにおふくろの味ってやつが食べたくなって!」
誰がおふくろだ。
いやそんなことより俺の作る飯が食べたくてわざわざここまで来たって?こいつらが?
相変わらずこいつらの思考回路はわからない。
新羅じゃないけど一度中身を見てみたい気もする。
「………馬鹿だろお前ら。」
馬鹿だ馬鹿だ。そう何回も言ってやると二人は不機嫌そうにギャーギャーと馬鹿って言う方が馬鹿だとかなんとか、ひどく子供染みた言葉を浴びせてきて、少しばかり染まっているその頬に思わず笑ってしまった。
Hello My Brother!
――――
双子にご飯をつくってあげる臨也が書きたかったんだけどあまりにもぐだぐだ。
没にしようとも思ったけどもったいない精神が働いて救済。
恥ずかしくなったら消すかもです。