土斉 | ナノ
「あ、斉藤、さん・・・?」
聞き憶えのある高く綺麗な声。千鶴か。
「毛布を用意した方が良いかな、それとも起こした方が良いのかな・・・?」
暫しおろおろと落ち着かず悩む千鶴。
かわいらしいが、
余り悩ませるのも本意では無いので起きようとした処で―――「ん?おい千鶴、どうしたんだ?」
「あ、原田さん!斉藤さんが寝てるんですけど、どうしたら良いかなって・・・。」
「あーあー、縁側なんかで寝たら寒いだろうに・・・疲れてんだな。」
左之がしゃがみ、俺の髪を手で梳く。
少し気持ち良い。
「おい原田、千鶴。どうしてんな所でしゃがんでんだ?邪魔だろうが。」
!・・・副長の声だ。流石に起きなければ・・・。
「ああ土方さん、斉藤が寝ちまって。風邪ひくから起こそうと思ったんだが。」
「斉藤が?」
短く聞き返す。
此方へ来る足音が大きくなる。
しかし今更起きにくいというか・・・眠い・・・。
「・・・寝かせてやれ。疲れてんだろ。俺が部屋まで運ぶ。
ああそうだ、おまえら炊事当番だろ、もう準備した方が良いんじゃねえのか?」
「あっ、忘れてたわ!千鶴、早く行くぞ!」
「あっ、はい!」
そう言い手まで繋ぎながら去っていく二人。やれやれだ。
「さて、と。」
ひょいと俺の身体が浮く―――受け止められる。
ああ、あたたかい。
これは副長の首だろうか。
長い髪がくすぐったい。
・・・気持ちいい、な。
副長とこんなに触れたことは無いかもしれない。
総司が副長が運んでくれたと教えられたこともあったが、
その時は捕り物があり情けなくも出血の所為で歩けない程に意識が朦朧としていた。
だから、全く憶えていない。
血で濡れてさえいなければ、きっとこんなにも温かくて、気持ちの良いものだったのだろう・・・。
襖を開ける音。
畳に寝かされ、少しの淋しさに身が震えた。
布団を敷く音。
火をくべる音。
しかし最も聞きたい声は聞こえない。
今度は布団に寝かされる。
未だ入ったばかりの布団は水の様に冷たい。
先程の温もりが、恋しい。
「斉藤。」
唐突に名を呼ばれ、驚く。
「悪いな、いつも無理させて・・・嫌な役ばかり頼んで。」
そんなことは無いです。
あんたの役に立てれば俺は良いんです。
耐えられるんです。
「変若水飲んで、昼間に動くなんて相当辛いだろうに・・・俺は、頼りっぱなしだ。情けねえ・・・。」
そんな声を出さないでください。

俺がどうなっても―――あんただけは幸せに。
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