流れ込んだ血の甘さ | ナノ


「甘楽。」

「なぁに臨也。」

そう言って柔らかく微笑む彼女は美しかった。
艶やかな黒い髪にきめ細かい、吸い付くような白い肌。
全身を真っ黒な服で覆い、その整った顔に紅色の瞳を携えた彼女はまるで。

そう、まるで俺のようだった。


「君は、なんでここにいるの。」

「臨也が泣くから。」

「泣いてない。」

「泣いてるよ。」

甘楽との会話は、いつもろくに続きはしない。
いつもこうやって、甘楽が支離滅裂なことを言って途切れる。
涙を流さないで泣く方法なんて俺は知らない。
甘楽はいつも、そうやって俺を惑わせる。

「甘楽。」

「なぁに?」

「なんで、君消えないの。」

俺の作った人格は、確実に俺のものでなければいけないのに。
彼女の人格は一人歩きして、そうして俺の手綱は切れてしまった。
彼女の声は内からも外からも響いてくる。

人間を愛していない俺など存在してはならないのに、彼女の声はその絶対を溶かそうと甘く囁く。

「ねぇ臨也。私があなたを傷つける人すべて殺してあげる。」

あなたが私以外を見るなんて許さない。
幻覚の体温の暖かさに目眩がした。



流れ込んだ血の甘さ


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ヤンデレ甘楽たん。
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