森の奥の | ナノ


静雄が住んでいる村は山の奥の方にある、木々に囲まれた、それなりに人口も多く、それなりに貧富の差もある、どこにでも存在するようなありふれた村だった。
そんなありふれた村にも、いや、ありふれた村だからこそ、お約束のような決まり事は存在していて。

獣が出て危険だから決して入ってはいけないと言われている村の北側の森。
その中に人目を拒むようにひっそりと、こぢんまりとした、それでも人が四人は住めるであろうほどの家が建てられていることを静雄は知っていた。
元来静雄は体が丈夫で、それもただ単に丈夫なわけではなく、例えば熊や虎なども猛獣に襲われたとしても生きて帰ってこれるような、そんな人間離れした体の持ち主であったので、そんな禁忌とされている森の奥にも入り込むことができたのだ。

化け物染みた体のせいで、村の大人子供の中で孤立気味だった静雄は、今日も今日とて例の家の周りで時間を潰していた。
周りの大人にこの家のことを訪ねても、近づくな、決して扉を開けてはいけないと言われるばかりで、この家の存在そのものについては何も教えてはくれなかった。
そのときからこの家のことが頭から離れず、暇を見つけてはこの周辺に足を運ぶようになっていた。

扉の前に立って数秒。
村の中でも我慢強い方ではない静雄は、好奇心も人並み以上にはあり、そしてなによりこの家に何がいようとも怖がることなど何もないと思っていたのだ。
猛獣ですら殺すことができない自分をこんな普通の家に閉じ込められているようなものが、自分にとって害のあるようなものだとは、静雄には思えなかったのだ。

そう、静雄は今日、この扉を開けにここまで来ていた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -