毒々しく、赭 | ナノ
※遊女パロ
この身は嘘で包まれていた。
好きでもない奴らに世辞を言って、時には口説まで演じきって、そうしてやっと生き残ったこの体は、とうの昔に嘘にまみれていた。
そんなこの身体でも恋というものはできるのだと、笑みが零れた。
あぁ次はいつ来てくれるのだろう。
最近はそればかり考えている。
他の誰とも違った貴方。
「今宵は貴方のため、この身を捧げましょう。」
そう言った私に、指一本触れてこないのは貴方だけでした。
私は貴方だけを愛することができたのです。
これを誠の恋と呼ばぬなら、今示しまてみせしょう愛の証を。
どうぞ、私を信じて下さい。
「どうぞ。」
一言そう言って一房の髪をつまみ上げますと、ご聡明な貴方はそれだけで意味を察しましたのでしょう、すぐにいつも通りの表情に戻りましたが、確かに一瞬だけその顔から笑みを消したのでございます。
「私のことが信じられないというのなら、どうぞこの髪をお好きにお切りになってください。」
私は本気なのでございます。
他の男などどうでも良い。
そんな遊女にとって致命的な考え。
私は貴方の前でだけ人になれるのでございます。
「それでも足りぬと申すのでしたら、私はこの手でこの爪を剥いで見せましょう。それとも今ここでこの小指、見事切り落として見せましょうか。」
痛みに泣き叫ぶかもしれません。
貴方に無様な姿をさらすことになるかもしれません。
それでも私を信じてくださるのなら、私を恐れて離れていってしまわれても、この記憶が貴方の記憶の奥深くまで刻み込まれるというのなら、私は喜んでその痛みを甘受したしましょう。
そこまで一息で淀みなく言いますと、貴方はそれまで私に見せていたような柔らかな笑みをすっと消しまして、今まで私には見せてくれませんでした子供のような残酷な笑みを見せてくれまして、私にはそれがとても嬉しく感じられたのでございます。
毒々しく、赭
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ミクの指切りですね。
実際に指を切った遊女はほとんどいないそうです。
しかしキャラ崩壊どころの騒ぎではない\(^p^)/