おれだったら、 | ナノ
友人の母親からの電話。

(縁が・・・死にました。)


「えっ・・・嘘ですよね?冗談ですよね?はは・・・今日はエイプリルフールじゃないですよ。
そうだ、しかもよりによって縁の誕生日じゃないですか・・・。」

(・・・・・・嘘じゃ、ありません。あなたとは仲が良かったから、伝えるべきだと思って・・・。)

「嘘だ・・・そうだよ嘘だ・・・嘘だと言ってくださいよ・・・。」

(・・・・・・。)

「はは・・・なんでそこで黙るんですか・・・はは、は・・・。」

(・・・私だって、嘘だと思いたいです。でも・・・、)

「・・・あいつは、縁は何処にいるんですか。」

(・・・家に、います。)

「今すぐ行きます。いいですか。」

(はい・・・。)



「・・・こんばんは、滝澤くん。」

「こんばんは・・・何処ですか。」

「いつもの、居間です。」


「!・・・。」
蒼白い。
血の気が無い。

「縁・・・?か、確認してもいいですか。」

「・・・ええ。」

冷たい。
心臓のオトが聴こえない。
息をしていない。

「・・・・・・なんでだよ・・・なんで・・・。」

「・・・・・・。」

「答えろよ・・・いつも色々教えてくれるだろ、言い澱むことも無かったじゃないか。
おい・・・返事しろよ・・・。」

「なんで・・・なんで・・・お前言ったよな、約束したよな、おれが漫画家になったら単行本買ってやるってさ!
約束したよな!?
一緒に良い本作るって!
約束したよな!?
ひぐらしみたいな良いゲーム一緒に作るって・・・。」

「・・・んでだなんでだ!!お前は嘘吐いたのかよ!?
なんで死ぬんだよ!
・・・・・・・おれ、人前で泣いたことなんて赤んぼの時ぐらいだぞ・・・どうしてくれんだよ!!?」

「くそっ・・・なんで ・・・。」

死体は、何も言わない。

何も、見てはいない。

お前以外誰にも見せたくなかった涙は、お前以外の人が見て。

お前は、見てなくて。

「葬儀は身内だけでやる予定です・・・。」

「・・・お願いします。おれも参加させてください、お願いします・・・お願いします・・・。」


その後は、ロクに顔を見れなかった。

もうすぐで見納めになるのに。



「・・・嘘吐きが。」

「・・・・・・。」


「         」




(おれは、松本縁、おまえのことが好きだ。)

(「私が死んだら、誰か泣いてくれるかな。」
 「私が死んでも、誰も泣いてくれないよ。」
その答えは、死んでもわからない。その周りの人ですら。)
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