どこまでも青く澄んだ空 | ナノ
「あ。」
臨也さん。
もう既に見慣れたものとなった黒いコートが視界に入って、思わず声が漏れる。
「…やぁ。帝人くん。」
あの小さな呟きも聞き逃さなかったのだろう、臨也さんが振り返り、僕の姿を視界に入れる。
たったそれだけのことでも無性に嬉しくなり、嬉々とした表情を隠さずに臨也さんのもとへと駆け寄る。
「今日も、仕事ですか?」
「うん。出不精のお得意様がいてね。」
そう言って大袈裟に肩をすくめる臨也さん。
聞けば仕事は終わり、今から家に帰るところなのだという。
「あ、じゃあ…。」
言いかけて、詰まる。
こんなこと言ってもいいのだろうか。
ぐるぐるぐる。
不安が巡る。
悪い癖だと思うものの、不安は消えることなく淀みに溜まる。
「帝人くん?」
訝しげな臨也さんの声で我にかえる。
「え、っと。…その。」
「…良いから。言ってごらん?」
そうやって、優しい声をかけられなければ自分の意思を口にできない僕は、なんと臆病者なんだろう。
臨也さんはそんな僕を見て、何を言うでもなく笑ってくれている。
「あの、もし良かったら…なんですけど。」
「うん。言ってごらん?」
「…この後、一緒に食事でも行きませんか…?…なんて。」
と、突然臨也さんが笑い始めた。
今度はこっちが目を丸くする番だった。
「あっはは!ごめんね帝人くん。あんまり不安そうな顔するから、何かと思ったら。」
食事くらい、もっと気軽に誘ってくれていいのに。
本当に何でもないように笑いながら言う臨也さん。
この人はなんでこういつも自分の欲しい言葉を言ってくれるのだろう。
不意に、臨也さんの手が僕の頭に触れる。
なでなでなで。
「……………っ!?」
「帝人くんは可愛いなぁ。」
「いっ、臨也さんの方が可愛いです!」
…あれ?
何か今僕とんでもないことを口走らなかっただろうか。
あぁ、ほら臨也さんが呆けている!
どうしようどうしようと、半ばパニックに陥っている僕の前に差し出される手。
もう何も考えられずに固まる僕の手をとって、臨也さんが珍しくもはにかんで言った。
「…ほら、食事に行くんだろう?」
繋がった手の温度と、滅多に見れない臨也さんのはにかんだ顔とのコンボが相まって声なんか出やしなかったけど。
それでも大きく頷いて臨也さんに小走りでついていった。
どこまでも青く澄んだ空
――――
監禁調教もいいけどこんな帝臨も大好きだ…!
…ん?これ臨帝?
いいや帝臨だ!