2 | ナノ
一言でいうなら、白だった。
殺風景な部屋。
白を基調とした部屋のなかに、白と黒の服を着た男。
その男は、自ら纏っている黒さえも霞んで見えるほどの白だった。
全てを飲み込む白。
あぁ、自分でも矛盾しているとは思う。
それでもそう思わずにはいられなかった。
男、九十九屋は俺の姿を認めるやいなや、その唇に吸い込むような、突き放すような笑みを張り付けて言った。
「ようこそ折原。歓迎するよ。」
「…それで、わざわざこんな面倒くさい事までして、俺にいったい何のようだ。」
下から睨み付けるようにしながら無感情に吐き捨てると、九十九屋はほんの少し目を丸くして、芝居がかったように大袈裟に肩をすくめた。
「何だ、バレてたのか。つまらないな。」
まぁ、あがれよ。
そう言って手を引かれる。
部屋に連れていくのに手を引く必要はないんじゃないかと思ったが、さして抵抗せずについていく。
九十九屋は俺をソファーに半ば無理矢理座らせると、まるで海に浮かび上がる月を見るように目を細めて俺を見やった。
はっきり言って居心地が悪い。
「…さすがに写真より実物の方が数倍いいな。」
「?…そりゃ、どうも。」
コトリ、音を立てて目の前のテーブルに置かれるコーヒーカップ。
その用途に沿ってコーヒーが入れられているらしく、ふわりと鼻を香りが掠めた。
手をつけずに九十九屋を見上げる。
こいつは何故か座ろうともせずに、ひたすらにこちらを見つめていた。
「…本題は。」
焦らされるのは好きじゃない。
そう伝えてやると九十九屋は猫のように笑った。