屋上にて | ナノ
お前の願い、ひとつだけ叶えてやるよ。


「なあ、もし俺が殺されたら、お前どう思うよ?」
彼は冗談交じりの口調で言った。
彼とひとりの友人は、学校の屋上で青い空を見上げていた。
友は座って。彼は立って。
「どうって・・・なんなんだよ、いきなり。せっかく授業サボってのびのびしてるのにさぁ。」
「悪い悪い。で、どうなの?」
「・・・そりゃお前、悲しむに決まってるよ。お前が殺されたりしたら、学校つまんねーもん、だろ?殺されてほしくねえよ。」
友人も冗談交じりの口調で言った。真剣に。
「そっか。」
彼は視線を友人へと移すと、にっこりと笑った。
「じゃあ、止めておこう。」
「?なにを。」
「―――俺、お前のことを殺そうと思っていたんだよ。」
「――――――え、」
友人は顔をひきつらせた。
「でも、お前がそう言うのなら、やめようと思ってさ。」
彼は複雑な表情でまた空を仰ぐ。
そして、ポケットからナイフを取り出す。
小さい小さいナイフ。鋭く尖ったナイフ。
友人は不安と安堵の絡みあったような、複雑な表情をしていた。
それに対し彼は、嘲笑を浮かべてナイフを見る。
「これで殺そうと思ったんだけどなあ・・・。」
友人は声を絞り出して聞いた。
「・・・なんで。」
「楽しいからさ。」
彼はすぐに答えた。
「でも、安心してよ。殺さないことにしたからさ。」
そして彼は笑む。友人も顔を強張らせ、笑んだ。
「―――俺をね。」
彼がそう言った瞬間、友人は青い空に届かぬ紅を撒き散らす。
友人の意思とは無関係に。
「なっ・・・、で、いたいいたいいた、い・・・!」
顔を歪めて命乞いをする。一生の願い事を。
それでも、友人とその下にあるコンクリートぐらいしか、状況が変わることは無かった。
曖昧な灰色は、赤色に蝕まれていく。
「俺はお前を殺してから、俺を殺そうと思っていたんだ。」
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