【風待ち】 | ナノ
【風待ち】

「・・・暑いなあ・・・」
さんさんとした日差しが照る。
お色気刑事は署に何故かある和室の縁側のある部屋で上着も脱がずに寝転がっていた。
その部屋の机には、殺人事件に関する古い書類と、用紙とペン、それに墨汁が置いてあった。
(確か今日は特に暑いとか天気予報で言っていたな・・・二十九℃くらいにまでなるんだっけか?)
「勘弁してくれ・・・・・・。」
無理にでも寝てしまおうと、目を閉じて横に寝返りを打つ。
外側への障子を全開にしてあるのに全く風が吹かず、涼しく無いことにお色気刑事は益々苛立つ。
それでもお色気刑事は諦めずにじっとそのまま動かない。
(・・・こーなったら意地でも寝てやるわよ・・・!)
・・・・・・極度の負けず嫌いだった。
唐突に、襖が開く音。
(誰だ?まあ、良いか・・・・・・。)
お色気刑事はそのまま気にせず狸寝入りを決め込むことにした。
「なんだ、こんな所にいたのか。・・・寝てるのか?」
谷在家の声だった。
(・・・まあ、仕事を命令されない限りは悪いが無視を決め込もう・・・。)
寝不足と暑さで半ば無気力状態なお色気刑事は、起きるのも面倒だった。とりあえず耳だけを谷在家に傾ける。
「・・・暑そうだな・・・コートくらい脱げば良いのに。・・・しかし、かわいい寝顔だ。」
そう言って谷在家は優しく微笑む。
「・・・・・・。」
(可愛い、って・・・趣味が悪いんじゃないかねぇ。)
正直ちょっとだけ照れるので、胸中でお色気刑事は悪態をついてみる。
谷在家はお色気刑事の近くに座り、お色気刑事の寝顔を見ながら少し遠い目で独りごちる。
「めずらしく魘されてないな、よかった・・・・・・。」
(・・・珍しく?そんなにウチは何時も魘されているのか・・・?)
「今幸せだといいな・・・・・・。」
「・・・・・・?」
谷在家が誰かに祈る様な調子で呟くので、お色気刑事は気になった。しかし今更起きるのも何か気がひけるので止めた。
「どんな夢を見てるのかな・・・?苦しそうではないが、眉間に皺が寄ってるぞ〜?」
(・・・まさか起きているのに気づいて言っているんじゃないでしょーね・・・。)
少し訝しげに思いながらもお色気刑事は寝たふりを続けた。
「・・・今は二人きりだな・・・・・・。」
(え、え?意味深なことを呟かないで?え?)
お色気刑事は自分身体が先程よりも熱く感じられた。心音が煩いと、焦った。


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