仕事を終え、さてロッテリアで夕飯でも、とトムさんと街を歩いていた時だった。
俺の携帯から着信音が響いた。
「電話か?」
「あ、いや、メールみたいっす」
その着信音を聞いて、今まで静かに鼓動をしていた心臓が急にどくどくと激しく脈打ち始めた。
個人設定をしていた着信音。その音が知らせるのは臨也からのメールだ。
今すぐ受信ボックスを開きたいのを何とか耐える。今はトムさんという大事な上司と居るのだ。携帯を弄るなんて失礼だろ。
「返事してやれよ、あちらさんは待ってんだろ?」
トムさんは俺のポケットから携帯をするりと奪い、それを俺の手に握らせた。
チカチカと新着メールのランプが光っている。
「すんません、直ぐ済むんで」
「いいから気にすんな」
トムさんの気遣いに感謝しながら、受信ボックスを開く。
「……っ、あのノミ蟲野郎…!」
(可愛いことしやがって!)
メールを見た途端に頬に熱が集まり、にやけずにはいられない。
顔文字や絵文字(何か知らねーが動いてる絵文字だ)が使われているそのメールの本文にはこう書いてあった。
『今日は早く帰ってきてね(ハートハートハート)お風呂入ってベッドで待ってるから(^□^)』
「トムさん……」
「どうした?」
「今からちょっと用事が出来たんで夕飯、また今度でいいっすか」
俺がそう言うと、トムさんは俺の背中を叩いて、早く行ってやれ、と笑ってくれた。
◆
「シズちゃんから返事ないなぁ」
俺はいつもの回転椅子に座り、携帯を握り締めながらシズちゃんのメールを待っていた。
何度目かの新着メールの問い合わせで、漸く一件のメールを受信した。
「もう!シズちゃん返事遅いよー……って、なに、これ!?」
文句を垂れつつ開いたメールは、そっけない言葉……と絵文字で綴られていた。
『今から行くから待ってろよ(ハート)』
普段絵文字なんか使わないシズちゃんが、あの機械音痴なシズちゃんが!
「こ、これは……保存するしかないよねぇ」
顔の火照りを感じながら、そのメールを保護する。
四苦八苦しながら絵文字を使ってメールを打っているシズちゃんを想像したら、思わず笑みが零れた。
「シズちゃん、シズちゃん……」
携帯の画面をそっと撫で、シズちゃんの到着を待つ。シズちゃんが来たら、ぎゅうって抱き着いてメールありがとうって言って、それから沢山キスしてあげよう。あ、さっきベッドで待ってるってメールで送っちゃったけど、まあ……玄関まで出迎えてあげるのも悪くないよね。
ああ、早く来ないかな。楽しみだなあ!楽しみだなあ!楽しみだなあ!
20101218/加筆修正
地元イベントの無配ペーパーのネタでもあり、某所のチャットでも投下させて頂きました。しずおのバースデーセットの色紙に合わせて顔文字を(^□^)に修正(笑)