※サイケ(女体化)の生理ネタ
※臨美(先天性♀)が出てきます
※津軽もサイケも頭が弱いです
それは前触れもなしに訪れた。
「つがるー!つがるー!」
ぼふっ、と背中に軽い衝撃。確認するまでもないが、後ろを振り向いてみるとやはりサイケが俺の腰に抱き着いている。
「つがる、つがるぅっ」
「サイケ?どうした?」
いつもと様子が違うことに気が付き、サイケを抱き締め背中を撫でてやりながら問いかける。
「うー…、つがるぅ」
サイケの大きな瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちた。
……泣いてる?
「サイケ……」
「うわあああん!つがる、俺、しんじゃうよおっ!」
「あ?」
「おまたから、血が出るの!とまらないのぉ……!」
「え、」
血、と聞いて俺は動揺した。血は痛い。痛いと血が出る。静雄にそう教わった。サイケは今どこかが痛いのだ。サイケが痛い思いをしているなんて、そんなの俺は耐えられない。
ぽた、ぽた、という水滴の音が聞こえ、そこに目をやる。
赤い液体がサイケの白い太股を汚していた。
その光景を見て俺の頭はパニックを起こした。
サイケが病気だったら、もし消滅するようなことがあったら、俺は、俺は……!
最悪の結末が頭を過り、俺はショート寸前。
とにかく血を止めなければ!
「サイケ、どこが痛いんだ!?絆創膏貼るか!?これ貼るとケガが治るぞ!」
「俺、びょうきなの?こわれちゃうの?つがると離れたくないよ……っ」
「俺だって離れたくねぇ…!」
いつだか静雄に貰った絆創膏を取り出し、サイケの服を捲る。真っ白な服が血で染まり始めていた。
出血がひどい。自分の指にもサイケの血がついたが、そんなの構っていられない。ぺたり、とサイケのおまたに絆創膏を貼った。
「んぅ……」
「サイケ、どうだ?」
「うー、まだ血、でてる気がする……」
俺が出来るのはここまでだ。早くサイケの故障箇所を明確にしなくては手遅れになっちまう。サイケが泣いているのに何も出来ない自分が情けなくなり、俺まで泣きたくなってきた。
その時、頭に浮かんだのは―……
「そうだ、静雄に診て貰おう!な?」
「しずちゃんにみてもらったらっ、なおる…?」
「ああ、きっと大丈夫だ!」
サイケを抱き上げて静雄の元に急いだ。確か今日は臨美の家に行くって言っていた筈。臨美にも相談しよう。あの二人ならきっとサイケを助けてくれる!
◆
「静雄!臨美!」
サイケを抱き抱えていたので両腕は使えず、足でドアを蹴倒した。
「津軽?そんな急いでどうしたの……ってちょっと!何ドア壊してんの!」
「うー…、のぞみちゃぁん」
「サイケ……?泣いてるの?どういうこと?」
サイケは臨美の姿を見て安心したのか、更にぼろぼろと涙を流した。臨美も静雄も何でサイケが泣いているのか分からないみたいでおろおろとしている。
「津軽、手前サイケを泣かしたのか?」
「俺が泣かしたんじゃねぇよ!サイケが大変なんだ、血が止まらなくて……」
「血ィ?」
「おまたからね、血が止まらないの……シズちゃん、みてくれる?」
サイケが不安げに瞳を揺らし静雄を見つめている。サイケの状況を聞いて、静雄は、
「サイケ、手前……血尿だったんか」
「……けつ?」
けつにょう、というのがサイケの身体を蝕むウイルスの名前なんだろうか。
とりあえず見せてみろ、と静雄はサイケの服を捲って覗き込もうとしたが、臨美が背後から静雄の頭を叩いてそれを制した。
「シズちゃん!サイケだって女の子なんだからそういうことしないの!ただの変態親父になっちゃうよ!」
「変態親父とは何だ!親父は認めるが変態は認めねぇぞ!」
「ああ、はいはい。シズちゃんは黙ってて。っていうかサイケ、もしかして生理が来たんじゃないの?」
「せいり……?」
きょとん、と首を傾げるサイケ。けつにょうだかせいりだか知らねぇが、それは治るんだろうか。俺はそればかりが気掛かりだった。
「臨美、そのせいりってのは治るのか?」
「ふふ、あのね、津軽。生理は病気じゃないの」
そして臨美はサイケと目線を合わせて微笑んだ。臨美の動きに合わせて、サラと綺麗な髪が揺れる。
「サイケ、君はね……大人の女性に近付いているんだよ」
「えっ」
「後でゆっくり説明してあげる。とにかく生理は悪いことじゃないの、いいことだよ。とりあえずナプキンの付け方教えるね?あとは……そうだ、お赤飯炊かなきゃ!」
臨美は何だか嬉しそうだ。俺にはまだよくせいりが何か分からないけど、サイケが病気じゃないと聞いて安心した。サイケもホッと安堵の溜め息をついてふにゃりと笑っていた。
◆
「おやすみ、つがる!」
サイケがそう言って布団に潜り込んだのは30分前のことだ。サイケは充電中に布団の中に居るのが好きらしい。いつだか充電中のサイケの姿を見た静雄が、本物の人間みたいだな、と言ったのを覚えている。
俺も一緒に布団に入ったが、何となくサイケの寝顔を眺めていた。
色白の肌。伏せられた睫毛。シーツに散らばる黒髪。薄く開かれた唇。服から覗く鎖骨。
見慣れている筈のサイケの姿が、今日は何だか印象が違って見えた。
臨美がサイケに言っていた言葉を思い出す。
(大人の女性に近付いているんだよ)
と臨美は言っていた。
「……オトナ、か」
男にせいりは来ないのだと臨美が教えてくれた。じゃあ俺はいつになったら大人になるんだろうか。
サイケが一人で先を歩いているようで、置いていかれるような感覚。
「早く俺も大人になりてぇ……」
20100921
大人への第一歩つがるverで夢精話が読みたい方は御一報ください(冗談ですよ!)