※学パロ



ジワジワと外から聞こえる蝉の鳴き声。カーテンを揺らす風は生暖かい。教師の声も、だらしがない――のは いつものことか。

「じゃあ、まあ、ハメ外し過ぎないようにしろよー。先生はお前等の面倒事に巻き込まれるのはごめんでーす。あと夏休み中部活で学校に来る奴は先生にアイスを奢りに職員室に寄るように。以上」

担任の教師なしからぬ発言に、クラスメートは呆れながらも笑っていた。

きりーつ、れーい、さよーならー

というお決まりの号令がかかり終わると、教室はワッと騒がしくなった。
一学期が終わり、明日からは夏休みだ。成績どうだった?夏休みどうする?ところどころでそんな声が聞こえた。
俺達も例外ではない。

「ねえ、先生さ。面倒事って言った時俺達の方見なかった?失礼しちゃうよねえ、ほんと。君からもよく言っておいてよ」

臨也が後ろの席を振り返り、坂田の机に頬杖を付きながら文句を垂れる。

「はあ?何で俺が?っつか兄貴の言う通りじゃね?お前ら絶対何かしでかすだろ」

そう言って坂田は俺と臨也を交互に指差した。

「それを言ったらお前も人のこと言えねェだろうが」

「ちょ、十四郎くーん。俺をこいつらと一緒にしないでくれる?」

「あ?土方の言う通りだろ」

俺が土方に賛同すると、坂田がじとっと俺を見遣った。坂田だけじゃない。土方の視線も感じる。

「一番問題起こしそうなの静雄くんなんですけどー」

「……何でだよ」

「じゃあ聞くけどな。俺達が海に行くとするだろ?で、静雄はトイレに行ってて、たまたま臨也が一人になっちまった。お前はトイレから帰ってきて臨也を見つけた。その時だ。臨也が他の男にナンパされてたらどうする?」

「…………」

土方の言ったシーンを想像する。水着を着た臨也が、知らねえ男に手首掴まれて、嫌だ嫌だシズちゃん助けて、と叫んでいる。
途端に沸々と沸き上がる怒り。

「……殺す殺す殺す殺す殺す!めらっと殺す!」

「はい、アウトー」

「それが問題だっつってんだよ」

坂田はケラケラと笑い、土方は呆れ気味に溜め息を吐いた。その一方で、キラキラと目を輝かす臨也。

「シズちゃんかっこいい!俺を守ってくれるんだ?シズちゃんラブーっ!」

ガタンっ、と椅子から立ち上がり俺に頬擦りする臨也を抱き締めながら、ふと疑問に思ったことを口に出した。

「じゃあ坂田はどうなんだよ?土方がナンパされてたらどうすんだ?」

「え?」

うーん、と坂田は暫く考え真面目な顔で答えた。

「一発殴って有り金全部貰ってくな。んでその金でラブホ行ってー、消毒ーとか言っておいしく頂きま……………いって!ちょ、十四郎!おまっ、グーで殴ったな!?」

「てめぇが変なこと言うからだろ。下心がある分静雄より質悪ィ」

坂田が頭を押さえながら涙目になってるのを見ながら、臨也がくすりと笑う。

「ふふ、相変わらず十四郎の照れ隠しは過激だねえ」

「なっ、何言ってやがる!臨也!」

「きゃあー、十四郎こわぁい」

ぎゅうっ、と抱き着かれ、臨也の匂いが強くなった。汗と制汗剤が混じったような、何か、妙にムラっとくる匂い……。

「はい、そこ。どさくさに紛れてイチャつかないことー。静雄くんはムラムラしないことー。っつかお前等暑苦しいんだよ、別に羨ましくないからね。俺と十四郎だってラブラブだからね!」

「何張り合ってんだ、バカ銀」

「ム、ムラムラなんかしてねえ!」

坂田の言葉に思わず顔が火照る。意識すればするほど汗が噴き出して、背中とシャツがぴとりと張り付いてしまった。

「えー?シズちゃんムラムラしてくれないの?俺傷付いちゃうなあ」

と言いつつも笑みを浮かべているところを見ると、臨也は俺が何を思っていたか分かっているのだろう。

「はいはい。もう分かった、好きなだけイチャつけよ、コノヤロー。とりあえず、早く夏休みの予定決めねえ?」

坂田が結った前髪をくるくると弄りながら言った。ヘアゴムがイチゴだということは突っ込まないでおく。

「そうそう、結局海行くの?俺、海ってあんまり好きじゃないんだよね。足に砂が付くあの不快感、どうにかならないのかな」

臨也が眉を潜めながら意見すると、土方も確かに、と頷いた。

「電車で行くとなると色々と面倒だしな」

「あ!でも浜辺で花火はいいかもなあ。ね、シズちゃん?」

未だ俺に抱き着いたままの臨也は俺の首に腕を回し、にこりと笑いながら小首を傾げる。
夜の海に臨也と花火……。いいかもしれねえ。

「あ、ああ、そうだな」

俺がこくこくと首を縦に振っていると、土方がそういえば、と切り出した。

「花火なら今度の日曜、花火大会があるぜ」

「まじでか。おい、花火大会だってよ。十四郎が浴衣着てくれるってよ」

「浴衣着るとは言ってねえだろうが!」

「え、着ないの?十四郎くんの浴衣姿見たいなー」

「シズちゃん、花火大会だって!皆で浴衣着て行こうよ、折角だし」

臨也はすっかりその気になったのか子供のように無邪気な笑みを浮かべている。

「はい、じゃあ決まりー。十四郎もちゃんと着て来るんだからな?」

坂田が土方に念を押すと、土方も渋々ながら頷いた。
とりあえず夏休みの一番初めの予定は決まったな。早くも俺は浴衣姿の臨也を想像しては期待を膨らましていて。夏休みが楽しみなのは臨也の方も同じらしい。

「ああ、夏休みって何てわくわくするんだろう。楽しみだなあ!楽しみだなあ!楽しみだなあ!」

「臨也くーん、お前は遠足前の子供ですかあ?」

「うるさいよ、坂田のばーか」

「バカはてめぇだ、静雄バカが」

「あはっ、それ誉め言葉ー」

いつものように口喧嘩をする臨也と坂田。そして臨也を宥める俺と、坂田の頭を叩いて制する土方。

蝉のように騒がしい俺達の夏は、まだ始まったばかり。






















20100617
夏休み前の4人。銀八先生と坂田が兄弟なのはわたしの趣味です、坂田の前髪ちょんまげもイチゴのヘアゴムもわたしの趣味です^///^



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