※裏要素含みます
ここ二週間。俺も臨也も仕事が立て込んでいて二人きりで会えない日が続いた。池袋で何度か鉢合わせたし、電話もメールも普段からマメにしている。でも足りなかった。臨也が足りなかった。
だから俺は久しぶりに臨也の家に招かれ、柄にもなく浮かれていた。二人でゆっくりする筈だった。
「臨也くーん」
「何?今忙しいんだけど」
冷たく返ってくる言葉。
臨也はパソコンの前に座って、ひたすら画面を見つめている。
流石に我慢の限界だ。
「手前、二人きりで居るっつーのに俺を放っておくとはどういう了見だ。あぁ?」
「ああ、放置プレイって言うんだっけ、こういうの」
カタカタとパソコンのキーボードを打ちながら、薄く笑みを浮かべる臨也。
俺はそんな臨也を無言で椅子から抱き上げた。
「あっ、ちょ、シズちゃん!?」
俺は空いた椅子に腰を降ろし、膝の上に臨也を乗せた。暴れる臨也をがっちりとホールドする。
「おら、早く続きやれよ」
「……やりにくいんだけど」
「っつか手前何やってたんだよ?」
パソコンの画面を覗き込みながら問い掛けると、チャットだよ、という答えが返ってきた。臨也は「甘楽」というハンドルネームを使ってチャットをしているのだと以前聞いたことがある。
へぇ、と質問しておきながらそれを聞き流した。臨也が何をしてようと関係ない。
「それよりも、……臨也、」
俺は臨也に触れていたい。ただそれだけだ。勝手だと思う。分かってる。だけどこの衝動には勝てない。
「なに……?」
「手前は何しててもいい。だからヤらせろ」
「はあ?何それ!?」
「邪魔はしねぇよ。けどな、こっちは二週間お預け食らってんだよ、手前も男なら分かんだろ?……臨也」
耳元でそう囁けば、ぴくん、と臨也の身体が震えるのが分かった。そして、
「勝手にすれば……!」
臨也からお許しを貰った俺はにやりと口角を上げるのだった。
◆
「んっ、あ、シズちゃ…はあ、」
ぐちゅり、と湿った水音が静かな部屋に響く。臨也の下半身から漏れる音。
俺は臨也を膝に乗せたまま臨也のペニスを取り出し、丹念に愛撫を続けていた。
臨也はというと、感じているくせにパソコンのキーボードから手を離そうとしない。確かに何しててもいいとは言ったが、放っておかれるのは腑に落ちない。
モヤモヤと広がるパソコンへの嫉妬に任せて、俺は性急に臨也のペニスを扱いた。
どぷ、と溢れた先走りが俺の指を伝う。その液を絡めるように擦ると、水音が一層激しくなった。びくん、びくん、と臨也のモノが脈を打つ。
「もうイきそうか?」
「ふっ、ぁあ…っ邪魔、しないって言ったのに……ッ」
「あぁ?邪魔はしてねぇだろ?手前が勝手に感じてるだけだ」
「シズちゃんの、いじわる……!あっ、あ、やぁあああッ!」
ぐりぐりと先端を弄ってやれば、臨也は呆気なく精を放った。放物線を描いてパタパタっ、と勢いよく飛んだ精液は、目の前のパソコンの画面に散った。
呼吸を整える臨也を抱き上げて身体をこちらに向かせる。
桃色に染まった頬と、涙で潤んだ瞳が扇情的だった。
ドクン、と下半身が疼く。思わず生唾を飲み込んだ。
「臨也、ケツん中拡げるぞ?」
「シズちゃん……言い方が下品だよ…」
「うるせぇ」
ぶっきらぼうに言いながらも、臨也の中を傷付けないようにゆっくりと指を侵入させた。先程臨也が出した精液が潤滑油の代わりとなり、直ぐに湿った音が聞こえた。
「ンっ、あ、んン…ッ」
臨也が悩ましげな声を上げる。
もう幾度となく重ねた行為に、臨也の身体は順応に快感を拾い始めたようだ。
「腰、揺れてんじゃねぇか」
「ふぁっ、あ、だって、仕方ない、だろ……ッ」
「気持ちイイから、ってか?」
にやにやと笑いながら臨也を見下ろすと、紅い瞳で射抜くように睨まれた。
涙と欲に濡れた目で睨まれても怖くねぇけどな。
構わずに内壁を拡げるように指を抜き差しする。
「…んぅ…っ、はあ、あ…シズちゃん……」
「あ?何だよ?」
わざとらしく前立腺から少し外れたところを指で擦る。
臨也の瞳はいつの間にかトロン、と蕩けていた。物足りないとでも言うように腰はゆらゆらと動いている。
「ちゃんと、触って……ッ、前立腺、…!シズちゃ…っお願い!」
「…っ」
頬を上気させ、唾液で濡れた唇でそんなことを言われたら、正直俺も限界だ。前が痛い程に張りつめている。
指を増やし、前立腺を無遠慮に擦る。ゴリュゴリュと勢いよく刺激すると、臨也の身体がびくんと震えた。
「ひあっあ!あぁっ、あっ!イくッ、シズちゃんっ、イクぅぅっ!」
先端から白濁を噴き出し小さく痙攣を繰り返す身体。
「手前、エロ過ぎんだよ……っ、もう入れるぞ」
「ん…はあ、……シズちゃん、早くぅ……」
自身を取り出すと、臨也は我慢が出来ないのか自らそれを自分の後孔に宛がう。
「おい、臨也……無理すんな」
「無理なんか、してない…!大丈夫、だから……っ」
そしてその言葉通り、ずぷ、と空気を含んだ音を漏らして俺のペニスを飲み込んだ。
「あっああァっ!ふか…っい、深いぃ…!」
相変わらず俺に跨がった状態の臨也は、自らの体重で奥深くまで俺を受け入れていた。
深い、深い、と鳴きながらも、腰を上下に振りたくる姿は浅ましく、そして美しい。
「気持ちイイ…っ、イイよぉ、シズちゃん……ッ!もっと、もっとぉ……!」
「は…っ、言われなくても、」
熱く絡み付く肉襞がたまらない。その襞を捲りながらガツガツと下から突き上げると、臨也はひっきりなしに嬌声を上げた。
「あっ、ぁあーっ!あ、ん!ソコ!あぁあん!」
前立腺を擦り上げると臨也は涙を流して悦んだ。見れば臨也のペニスは大洪水で、俺の下半身に水溜まりを作っている。
臨也の声と、表情と、身体に散々煽られ、俺も限界が近い。
「臨也……っ、中に出すぞ…!」
「はあっ、あっ、んん…!出して!シズちゃんの、出してぇ……!」
「あ…、出る、…く…っ、臨也、好きだ、愛してる……!」
「俺もっ、ぁ、俺も愛してる…っ、あぁあああ!イく、出るぅう!」
ガツン、と最奥を突くと同時に、臨也は今日三度目の射精を果たした。俺も臨也の内部に白濁を叩きつきる。
荒い呼吸を整えながら、臨也をぎゅうっと抱き締めた。すりすりと俺の首筋に甘えるように擦り寄る姿は普段の臨也からは考えられない。
「あ、」
「なぁに、シズちゃん?」
「いや、何でもねぇ」
「?変なシズちゃん」
俺の視界からは、パソコンの画面が丁度見える。
その画面に映し出された、
《甘楽さんは行方不明になりました》
という文字。
そして、
《あれ?甘楽さん落ちた?》
《っぽいね。お疲れ。おやすー》
という文字に、俺は優越感を覚えるのだった。
20100330