(※静雄視点)




グラウンドの真ん中では50メートル走。奥ではハンドボール投げ。更に隅の方では何故か握力の測定。
今日は外でやるスポーツテストの日だ(握力はほぼ時間潰しみたいになっていた)

「なぁ、静雄」

「あ?」

「今日のお前ら、何かおかしくないか?」

「……別に、何もねぇよ」

ハンドボール投げの順番を待っている間、門田に問われた。
門田の言う“お前ら”とは勿論俺と臨也のことだ。何となく昨日の一件のせいでギクシャクしてる気がする。俺も妙に意識してしまって、臨也の体育着から覗く鎖骨や、短パンから伸びる白く細い脚に目が行ってしまう。
昨日抱き締めた時、よく折れなかったな、とか。

「あああ!くそ!」

「やっぱり何かあったんだろう?」

門田は呆れたような、でも優しく笑って言った。
そうだ、門田に聞きてぇこともあったんだよな。

「……俺が今から言うこと、臨也に言わないでくれな」

「ああ、分かった」

やっぱり優しく笑う門田に安心し、俺は話してみることにした。




「――……で、臨也が新羅と一緒に帰るから平気っつった時、何かモヤモヤしたんだよな……」

俺が話してる間、門田は驚いたように目を見開いていたが、それでも黙って俺の話を聞いてくれた。

「お前ら、いつの間にそんな仲良くなったんだ?」

「仲良くなんかなってねぇよ!」

「あー…、分かった分かった。でも、そうだな……そのモヤモヤしてんのって、嫉妬なんじゃねぇか?」

「……は?」

「だから、新羅に嫉妬してんだろ。少なくともお前は臨也を守りたいって思ったんだよな?だけど臨也は新羅が居るから平気と言った。それが気に食わなかったんじゃないか?無条件に頼られてる新羅を羨ましいと思ってるんじゃないか?」

「ばっ、そんなんじゃ……、」

ない、と言いたかった。でも、門田の言葉を聞いて、パズルのピースがぴったりと嵌まったような気がした。

「何で俺は嫉妬なんか……」

「それは自分で考えるんだな」

ぽん、と俺の肩を叩いて、順番が回ってきた門田は行ってしまった。
俺はただそこに立ち尽くして、門田の投げたボールの行方をぼうっと見守ることしか出来なかった。

「シーズちゃん」

「!手前っ、臨也!」

油断していたところに、つんっと臨也に脇腹をつつかれびくりと肩が揺れた。

「ねぇシズちゃん、聞いてよ!俺ね、ハンドボール投げ25メートルだったんだけど!プールの端から端までの距離と同じなんだよ。すごいよね、俺ってすごい」

臨也はどこか興奮気味に話していて、その隣では新羅が呆れたように溜め息を吐いていた。

「僕より記録が良かったからってさっきからこればっかりなんだよ」

「新羅……、25メートルいかなかったんだな」

「セルティが居ないのに本気を出したって仕方ないだろう?」

「新羅の言い訳は聞き飽きたよ」

「言い訳って……臨也酷い!」

「新羅きもーい!」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ臨也と新羅。
俺は一人蚊帳の外。
心臓がちくちくと傷んで、胸の辺りをぎゅっと掴んだ。

「シズちゃん?」

「静雄?どうかしたのかい?」

「……何でもねぇ。俺、順番だからそろそろ行くわ」

二人を残して俺はその場を後にした。
順番が回ってきたのは本当で、直ぐ様ボールを引っ掴み、石灰で引かれた狭っ苦しい円の中に入る。
色んな思いがごちゃごちゃと頭の中で混ざっていて、俺はそのせいで苛々していた。
そして、気付いてしまった想いに気が動転していて。



(何で、俺が、臨也なんかに……!)



「あり得ねぇええええええ!!!!!!」



思い切り投げつけたボールは遥か遠くへ飛んで行き、周りからは歓声と悲鳴が混じったような声が上がった。



























20100603
臨也が25メートルも投げられるのかは不明。新羅の扱いがアレですが、わたしは新羅も大好きですよ!



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