(※静雄×臨美)



冗談じゃねぇ。何で俺がこんな目に。こんな店に来なきゃならねぇんだ。ほら、店員の視線が痛いだろうが。

「……やっぱ俺外で待っ……」

「ダメ!シズちゃんも一緒に選んでよ!」

店から出ようとした俺を、臨美が止めた。細く、白い腕が俺の腕に絡まっている。

「何で俺が……」

「だって服を脱がした時に自分の好みの下着を彼女が穿いてたら嬉しいでしょ?シズちゃんの好み、教えてよ」

そう、ここは下着屋だ。しかも女物の。男の俺が来るべきところではない。
マネキンが着用している下着は派手な物ばかりだし、その……布面積もあんまねーし、あんなもん穿いてる本人より見てる方が恥ずかしくなんじゃねぇか。

「勝手に選んでろよ、俺は別に手前が何穿いてこようがパンツごときにごちゃごちゃ文句言うつもりもねぇよ」

「う……っ、シズちゃん、酷い!女の子はね、少しでも可愛く見られたいの!女心が分からないから今まで彼女居なかったんだよ」

「うるせ……っ!それとこれとは関係ねぇだろ!」

「大有りだよ!私だって恥ずかしいんだからね。自分の彼氏下着屋に連れて来て、しかもその彼氏には勝手に選べばいいとか言われちゃうし……。まるでシズちゃんが私に全然興味がないみたいじゃない。私はただシズちゃんの好みの下着着けて、シズちゃんに可愛いよって似合うよって言われたかっただけなのに!昔はシズちゃんの喧嘩に付き合ってたけど、私だって普通の女の子なんだからね!」

よく喋る口で捲し立てられ、俺は情けなくも言い返せなかった。
確かに、臨美はれっきとした女だ。その臨美が俺に良く思われたい一心でこんなところまで俺を連れてきたなら、可愛いと思う。

「……はあ、付き合えばいいんだろ」

ガシガシと自分の髪を掻き混ぜながら溜め息を吐く。惚れた弱味とはこういうことか。

「シズちゃん……!」

ガバッと抱き着いてきた臨美を受け止めて、いつものようにサラサラの髪を撫でてやる。
と、背中に店員と思わしき視線。隣には派手な赤い下着を纏ったマネキン。
ハッと我に返り、慌てて臨美の身体を離す。

「は、早く選べよ!」

「もう!だからぁ、私が選ぶんじゃなくて、シズちゃんが選ぶの。ねえ、何色がいいかな?」

「……っ」

「今更照れてるの?ほんっとシズちゃんって童貞の鏡っていうか何て言うか……」

「手前、それ以上言ったらオカス!」

「やーん、シズちゃんのエッチー!」

きゃっきゃと騒ぐ臨美の隣で、俺は小さく舌打ちした。っつかもう童貞じゃねぇし。
それよりも早くここから出たい。さっさと選んじまった方が賢明だろう。

「何色がいいかって言ってたな?」

「あ、やっと選んでくれる気になったんだ?」

「ここから早く出てぇだけだ」

「あははっ、ごめんね、付き合わせて。で?シズちゃんは何色が好きなのかなぁ?」

にこにこと笑みを浮かべる臨美。それをまじまじと見つめて、臨美に合う色を考えた。

「……白」

臨美は一瞬きょとんと目を丸くして、その後大袈裟な程に笑った。

「あはは!流石シズちゃん!白ね、白かあ。シズちゃんの目に私はどう映ってるんだろうねぇ?純で清楚なイメージ?ふふ、嬉しいなぁ」

「て、手前が清楚な訳ねぇだろ!」

「えー?でも白がいいんでしょ?私に似合うって思ってくれたんじゃないの?」

「……っ」

「シズちゃんってばかーわいー」

それから臨美は白を基調とした下着を見つけては俺に意見を求めてきた。
俺は、あー、だとか、うーん、だとか、曖昧な相槌しか打つことが出来なかったが、臨美は満足そうに笑っていた。
結局決まった下着は、白の布地に白のレース、両端にアクセントとして黒の小さなリボンがついたもの。
やっと息苦しい空間から解放された俺は、大きく息を吐いた。

「付き合ってくれてありがとう。今度のデートの時はこれ穿いていくから楽しみにしててね」

するり、と腕を組まれ、臨美が上目遣いで俺を見ながら、その唇に綺麗な弧を描く。

「別に楽しみになんかしねぇよ!」

明後日の方向に視線を泳がせ、それでも絡まれた腕を振り払うことはしない。
いつまでもこんな店の前に居るのもアレだし、と思って歩き始めたその時。

「……っ痛!」

臨美が急に声を上げた。

「おい、どうした?」

「あー…、ごめん、靴擦れしちゃったみたい」

臨美が自分の足元を見ながら困ったように笑った。
臨美の視線を追うと、確かに左足が赤く擦れているように見えた。

「大丈夫か?」

「ちょっと痛いけど平気。絆創膏買わなきゃ…………って、シズちゃん?何してんの?」

「背中、乗れ」

「え?正気?」

「いいから早く乗れって言ってんだろ」

ほら、と更に促すと、臨美は躊躇いがちに俺の背に身体を預けてきた。俺だってこんな街中でこんな目立つことしたかねぇけど、怪我してんなら話は別だ。

「ありがと、シズちゃん」

「そんな靴履いてくっから靴擦れなんかすんだろ」

臨美は普段履かないようなヒールの高い靴を履いていた。

「だから言ってるじゃん。女の子は少しでも可愛く見られたいの!」

ぎゅう、と俺の背中にしがみつきながら拗ねたように言う臨美。
臨美のその発言と、さっきから背中に当たる胸の感触で、俺はもう頭がごちゃごちゃだった。歩き方がギクシャクするし、顔は熱くなるし。くそ!最悪だ!

「ねぇ、シズちゃん、」

「……何だよ」

そんな俺の心情を知ってか知らずか、臨美は更に爆弾を投下した。
俺の耳元に唇を寄せ、


(このままラブホに連れてって)


なんて言うものだから。
危うく臨美を落とすところだった。

女ってのは、本当に厄介だ。






















20100601
お誕生日祝いのお返しです//愛する如月さんに捧げます!臨美ちゃんをおんぶした時におっぱいが当たってドキドキする静雄が書きたかっただけです、すみませんでしたぁああ!こんな臨美ちゃんで良ければ貰ってやってください^^*


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