(※門六)




馴染みのファーストフード店。この後は映画を見て、ブラブラして、千景を俺の家に泊まらせる予定。そんな、いつもと同じ二人きりの時間。いつもと同じたわいもない会話。

「でな、こないだノン達とプリクラ撮ったんだけど、最近のプリクラってスゲーんだぜ?本物の三割増しっつーかさ、な?俺もかっこいいだろ?」

「……ああ、そうだな」

千景の財布から出てきたのは数枚のプリクラ。どのプリクラも千景が真ん中で、その周りに数人の女子が映っていた。

かっこいいだろ、と聞かれたが、正直千景が余計可愛く見えるだけだった。
それよりも問題なのは、

「お前、まだ女と遊んでたのか」

俺が居ながら女と会っている、ということだ。
すると千景は、むっと唇を尖らせて拗ねたように言う。

「門田だって遊馬崎達といつも一緒に居るだろ?俺にとって女ってそういう存在なの。俺だって遊馬崎達に嫉妬してない訳じゃねーんだからな」

「そう、か」

「おう」

千景は今更照れたのか、頬を染めてシェイクのストローを弄っている。

可愛い。

嫉妬するのも、千景の言葉一つですぐ嬉しくなるのも、全部こいつが好きだからなんだと思う。

「あ、門田」

「あ?」

ちょいちょい、と手招きをする千景。内緒話をするようなその行動に、俺も千景の方に身を乗り出す。


(安心しろよ。一番は京平だから)


「……!?」

普段呼ばれない名前と、耳元に響いた甘ったるい声と。ちゅ、と耳朶に口付けられたリップ音。
ガタタっ、と派手な音を立てながら慌てて身を引いた。
そして顔に集まる熱。

「ははっ、門田ぁ、顔真っ赤だぜ?」

「……うるせぇ。お前のせいだろうが」

「でも今の俺、かっこよかったろ?」

「いや、可愛かった」

「……門田から見た俺ってどう映ってんだよ」

シェイクを飲みながらそっぽを向く千景の耳が赤くなっていて、何だかいい気分になった。絆されてるのは俺だけじゃないらしい。





「そうだ、なあ、プリクラ撮らねぇ?俺、門田ともプリクラ撮りたい」

ファーストフード店を出て少し歩いたところで、千景が思い付いたように言った。

「何だ?突然?」

「いや、そういや門田と撮ったことなかったなあ、って。男同士でも撮れるところあるしさ。……駄目?」

多分、無自覚だろう。
ことん、と小首を傾げなら“駄目?”なんて言われたら……たまったもんじゃない。
そしてそんな千景に対し、駄目だ、なんて言えるはずもなく。

「……別に構わねーけど」

「ほんとか?よし、じゃあ行こう、門田」

ぐい、と千景に手を引かれながらゲーセンに入る。

その時に見覚えがありすぎる顔を見た。が、あっちも臨也(何故か女の恰好をしていたが、静雄と居たからきっと臨也だろう)を連れていたから、互いに声を掛けることはなかった。


「門田、これでいい?」

一つのプリクラ機の前で止まった千景が俺に問いかけるが、俺はこういうのに疎いから正直よく分からない。
とりあえず千景に任せて、首を縦に振る。

ほとんど初めてに近いプリクラ機の中は、どこかのスタジオなんじゃないかと思うほど眩しかった。
千景は慣れた様子で次々と設定を選択していく。

「カメラ、こっちな?とりあえず全身と、顔アップと……まあ後は適当に」

「ああ、分かった」

「そんな怖い顔すんなってー。ほら、笑顔!」

「あ、ああ」

にか、と笑う千景につられて頬が緩む。
すると、カシャ、というシャッター音が響いた。
どうやら一枚撮影されてしまったらしい。

「門田ぁ、俺じゃなくてカメラに向かって笑ってくんねーと」

「…悪い」

「まあ、笑った門田はかっこいいから好きだけど。じゃあ気を取り直して、次はアップで撮ろうぜ」

カメラの前まで背中を押され、千景も俺の隣でカメラに向かってピースサインを作っている。

俺はというと。
情けないことに既にプリクラどころではなかった。
頬が触れそうなほど距離が、近い。
普段、外でこんなに千景を間近に見るのはキスをする時くらいだ。
二人きり。仕切られた空間。
急に、ざわ、と胸がざわついた。

「門田、だからカメラあっちだっ、て……、」

俺の視線に気付いてこちらを向いた千景。
あまりの至近距離に、二人して一瞬身体が固まった。

「千景……」

「わ、悪ぃ…っ、」

「いや、それは俺の台詞だ。悪いな、千景」

「え、何……っ、んんっ!?」

千景の腰を抱き寄せ、その唇を塞ぐ。
初めは啄むように軽く、瞼を綴じた千景を確認すると、それを合図に段々と深く深く口付ける。

「は…っ、千景……」

「ん、はぁ、ん…ふ、あッ」

どちらともなく絡ませた舌が、水音を奏でる。ここは外だとか、誰かに見られるかもしれないとか、そんな背徳感さえ興奮を煽るだけだった。
どこか遠くで、シャッターの音が聞こえたような気がした。


「……悪かった」

「もういいからそんな落ち込むなよ」

すっかり自己嫌悪に陥っている俺の肩を、千景はぽんぽんと叩く。
情けない。あんながっついて、本当に。

「ほら、門田の分もやるから」

「…………」

出来上がったプリクラを見て、俺は更に自己嫌悪。

「俺は嬉しかったぜ?優しいお前も、かっこいいお前も、俺は好きだから。それにこういうプリクラって、恋人、みてぇだし?」

「千景……」

「ん?」

「……いや、何でもない」

「?」


……またキスするところだった、なんて口が裂けても言えないだろ!





















20100527
という訳で、門六ver、です。門六書いたの初めてで、もう誰こいつら、みたいな。ドタチンムラムラし過ぎじゃね、みたいな。全力ですみませんでしたorz
誤字脱字など何かございましたらお気軽にどうぞ^^




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