某月某日。
新羅の元に一枚の葉書が届いた。同じく、門田の元にも。
それを目にした二人は、それぞれ全く違う場所に居ながら、全く同じことを口にした。

「「何だ、これ」」

その葉書の内容とは、所謂新婚カップルが「僕達結婚しました」と友達に報告するようなものと同じで、そこには「俺達同棲します」とパソコンで打ち込まれた文字が綴られていた。写真もプリントされていて、男二人が幸せそうに笑っている。二人共、新羅と門田の同級生である。その写真の下には住所と、更にその下には手書きの文字で「日曜日に遊びに来てね!」と書かれていた。





「やっぱり京平にも届いてたのかい?あの葉書」

「新羅もか……」

「いや、でも一人じゃなくて良かったよ。本当は来ようか迷ったんだけどね……そんなことをしたら僕の人生、終わってしまう気がして……」

小綺麗なマンションを前にし、新羅と門田は既に疲れた顔をしていた。
それでもここまで来たのは、単純に後が怖いからである。このマンションの一室に住む一組のカップルは、最強で最凶な二人なのだから。いくら10年来の友人とは言え、社会的に抹殺されることもあり得ない話ではない。

新羅は溜め息を吐き、門田は諦めたようにインターホンを押した。
向こう側でカチャカチャと鍵を開ける気配。間もなくしてドアが開けられ、臨也が顔を出した。

「いらっしゃい、二人とも」

にこりと笑う臨也。
そのピンク色でフリルがふんだんに使われたエプロンを纏う臨也を見て、新羅と門田はこの場に居ることを早くも後悔し始めたのだった。




「よぉ。新羅、門田」

リビングのソファに座っていた静雄は、友人達の姿を確認すると立ち上がり軽く手を上げた。相変わらず、バーテン服姿である。

「やぁ、静雄」

「久しぶりだな」

臨也の変わり様を見た後だからだろう。その変わりない姿に、二人はホッと息をつく。

「さ、座って座って。今お茶淹れるから待っててね」

「俺も茶淹れるの手伝う」

「ほんと?ありがとう、シズちゃん。大好き」

キッチンへ向かう臨也と静雄の背中を見つめながら、新羅はひくりと口角をひきつらせた。

「……時間は人を変えるって本当なんだね。私は今奇々怪々なものを見ているようだよ」

「まあ、臨也が幸せそうならいいんじゃないか」

「京平の父親っぷりは変わらないなあ」

門田は昔から何だかんだと言いつつも臨也を可愛がってきたから、この状況も段々と微笑ましいものに見えてきたらしい。
イチャつきながらお茶を淹れる二人を見る目は、父親のそれと同じだった。


「お待たせー」

臨也は上機嫌で4人分のマグカップをテーブルに置いた。

「ありがとう、臨也」

「さんきゅ」

臨也と静雄の前に置いてあるマグカップは、一目で色違いだと分かったが新羅も門田もそこには触れないでおいた。

「改めて、いらっしゃい、二人共。ここが俺とシズちゃんの愛の巣だよ!」

「愛の巣とか言うなっ」

「えー?だって毎晩愛し合ってるじゃない。愛の巣でしょ?」

「……っ」

「あははっ、シズちゃん照れてるー!可愛い!」

「な……っ、ば、手前のが可愛い!」

「ちょっと待って、シズちゃん!二人が見てるから!」

周りが見えなくなった静雄が臨也を押し倒そうとしたが、臨也がそれを制した。

「あー…、うん、気にしないで。どうぞ続けてくださいバカップル共」

「おい落ち着け、新羅」

目が据わり始めた新羅を落ち着かせようとする門田。
臨也も眉をハの字に下げて笑いながら詫びを入れた。

「ごめんねぇ、新羅。シズちゃんってばこの年になってもお盛んでさあ」

「うるせぇ、手前が可愛いのがいけねえ」

言いながらぐしゃぐしゃと臨也の髪を掻き混ぜる静雄と、それに対し子供のようにはしゃぐ臨也。
それを見た門田が慌てて話題を提供した。

「それよりも、いい所だな。部屋も綺麗にされてるし」

「確かに男二人が住んでるとは思えないね」

新羅も漸くこの状況に慣れてきたのか、平静を取り戻し相槌を打つ。

必要最低限の家具。整理された室内。
だからだろうか。コルクボードに貼られた何枚もの写真が一際目を引く。

「……幸せそうで何よりだよ」

その写真が視界に入った新羅は思わずそう溢した。

「幸せだよ。すごく幸せ。ね、シズちゃん?」

「ああ……」

見つめ合う二人に再びピンク色のオーラが漂い始める。

「高校の頃はあんなに歪みあってたのに奇想天外なこともあるもんだね」

「そういやお前らの喧嘩止めるのは大変だったな」

「えー?喧嘩?やっだなあ、ただのじゃれあいだって」

「まあ、好きな奴ほどいじめたいって言うしな」

「あれ?シズちゃんってばあの時から俺のこと好きだったんだ?」

「……!手前だって、そうだろうが!」

「ふふ、どうだろうねえ?」

隙あらばベタベタする二人を目の前に、新羅と門田は葉書を受け取った時のように以心伝心するのだった。



(もう、勝手にしてくれ!)


























20100520
10年後という設定を上手く使えずにすみません!落ちなし山なしで申し訳ないですorz静臨は何年経ってもラブラブバカップルだと思います^//^新羅もドタチンも何だかんだで祝福しているかと(笑)
素敵なリクエストありがとうございました!


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