(※静雄と臨也の子供、静也くんが出てきます)




平和島家は、今日も平和である。

「あ、おはよう。シズちゃん、静也」

ふわりと鼻腔を擽る朝食の匂い。朝食を作っていた臨也は、漸くリビングに顔を出した二人に声を掛けた。時刻は7時過ぎ。臨也の記憶が正しければ、目覚まし時計は6時半にセットしていたはずだ。

(静也はお寝坊さんなシズちゃんに似ちゃったからなあ)

臨也は眠たげに目を擦る静也を見遣り、くすりと笑う。

「何笑ってんだよ、臨也」

臨也を後ろから抱き締め、臨也の肩に顎を乗せながら耳元で問いかける静雄。そのままついでとばかりに臨也の頬にキス。ちゅ、ちゅっというリップ音は、外で囀ずる雀の声のようだ。

「ふふ、何でもないよ」

臨也が静雄の頬に唇を寄せて口付けし返した時だった。くいくい、と臨也の着ていたエプロンが引っ張られた。

「しずおばっかずりぃ!おれも!」

むう、と真ん丸の頬を更に膨らます子供。さらりとした茶色がかった髪に、作り物のような紅い瞳を持つその子供の名は、静也といった。

「静也もおはようのちゅうして欲しい?」

静雄の腕からするりと逃れた臨也は、静也を抱き上げ視線を合わせながら首を傾げる。静也はこくこくと大きく頷き、そして、

「ん……っ」

臨也の唇に軽くキスをした。

「……っ!静也!手前!口は駄目だっつってんだろ!」

その光景を目の当たりにした静雄が、慌てて静也を臨也から引き離す。首根っこを掴まれた静也はばたばたと足をばたつかせ暴れるが、静雄にとってはそんな抵抗は屁でもない。

「静也は俺のこと大好きだもんね?勿論俺も、静也くんラブ!」

「いざや、ラーブ!」

きゃっきゃと騒ぐ二人に対し、静雄はふいとそっぽを向き、静也を下に降ろした。

「……早く飯にするぞ」

「しずお、ヤキモチやいてんだろ!」

「ねーよ!」

「まあまあ、シズちゃんも静也も座って。遅刻しちゃうよ」

静也の背中を押して椅子に座るよう促しながら、臨也は唇の動きだけで静雄に告げた。


(シズちゃんも大好きだよ)


それが伝わったかどうかは、静雄の赤く染まった顔を見れば一目瞭然であった。



白米にワカメの味噌汁、焼魚。静雄の前には納豆も置いてある。臨也は自分の食事よりも先に、静也の為に焼魚の骨を抜き取り、食べやすいように身をほぐしていた。

「はい、静也」

「ありがと、いざや!」

にこりと笑みを浮かべる静也につられて、臨也もどういたしましてと微笑んだ。そんな彼に焼魚の皿を差し出す静雄。

「臨也」

「?何?」

「俺のも」

静雄は、むすっ、と明らかに不機嫌な表情を浮かべていた。

「もー、シズちゃんは魚の骨も皮も関係なく食べちゃうじゃない」

「しずお、またヤキモチだろー?かわいいところあるな!」

「そうそう、シズちゃんは身体はでかいくせして中身は小動物みたいに可愛いんだよねえ」

何だかんだ言いつつも静雄の焼魚にも静也と同じように骨を抜き取ってやりながら、臨也はクスクスと笑う。その手をちょんちょんとつつき、静也は大きな瞳を覗き込ませながら臨也に問いかけた。

「おれは?おれもかわいい?」

「可愛いよ。勿論だろ?何てったって静也は俺とシズちゃんの子だもの。ね、シズちゃん?」

「……まぁな」

ぐりぐりと納豆を掻き混ぜながら静雄はぶっきらぼうに答えた。誰の目から見ても、そのそっけなさが照れ隠しだと分かる。
そんな父親の姿を見た静也は、下を俯き黙々と焼魚を咀嚼していたが、それもまた照れ隠しと分かった。

(ほんと、性格までそっくりなんだから)

そんな二人の姿を見ていた臨也は、心の内で静かに笑った。



「じゃあ行ってくる」

朝食を済ませ、家を出る準備を終えた静雄と静也。玄関先で二人を見送ることも臨也の朝の仕事の一つだ。

「静也、幼稚園に着くまでシズちゃんが暴走しないように見張っててね」

「まかせとけ!」

「手前……臨也、余計なこと言うんじゃねぇよ、静也が調子乗んだろ」

「ははっ、冗談じゃない。ほら、早く行かなきゃ遅刻だよ?」

「あ、やべ。じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい」

ちゅ、と軽く口付けを交わす静雄と臨也は新婚さながら。
それを見た静也が黙っている訳がない。

「あー!しずおだって口にちゅーしてんじゃん!」

「俺はいいんだよ。臨也の旦那だからな」

「ずりぃ」

「ほら、静也も行ってらっしゃいのちゅー」

すっかり落ち込んでしまった静也に視線を合わせるようにしゃがんだ臨也は、そのまま静也の小さな唇に自分のそれを重ねた。
途端に静也は満面の笑みを、静雄は不服の表情を浮かべる。

「はいはい、そんな顔しないの。シズちゃんは夜に続きしようね」

「……!今日、早く帰るから、な」

「うん、美味しいご飯作って待ってるよ。行ってらっしゃい、シズちゃん、静也」

「行ってくる」

「いってきまーす!」

臨也は玄関先でひらひらと手を振りながら二人の背中を見送る。
何だかんだと言いつつも手を繋ぎながら出掛けていく静雄と静也の姿は微笑ましい。

「さーてと。洗濯洗濯!」


平和島家は、今日も平和である。






















20100510
ものすごく個人的な趣味を詰め込んでしまった感が…!もう平和島家はちゅっちゅしてればいいじゃない!みたいな、すみませんでしたorzちなみに静雄にだけ納豆が出されていたのは臨也はねばねば系がだめだからです(市ノ瀬設定)
ともあれ書いていてすごく楽しかったです!リクエストありがとうございました^///^





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