シズちゃんって、絶対奥手だと思う。
シズちゃんと付き合って一ヶ月。
何も進展がない。
勿論、シズちゃんは変わった。相変わらずぶっきらぼうだし乱暴だけど、ゴミ箱や自販機は投げて来なくなったし、二人きりで居る時はらしくない甘い台詞を囁く。
好きだ、臨也。愛してる。
なんて、思い出すだけで何だかむず痒い。
ムードはあるのに、シズちゃんは一線を越えようとしない。抱き締められたことはあるけど、キスはまだ。キス以上なんて、想像も出来ない。いや、違うな。キス以上のことを俺は想像してる。シズちゃんの身体、いつもはバーテン服で隠れた身体はどうなっているんだろう、とか。唇はマシュマロみたいに柔らかいんだろうな、とか。あの長い指で触れられたらたまらないだろうな、とか。更には、シズちゃんのモノを受け入れた瞬間を想像したり。
こんなの、俺が変態みたいだ。
それもこれも、シズちゃんが手を出して来ないのが悪い。
それとも、俺のことなんて興味ない?
シズちゃん、シズちゃん。俺はこんなに君を想ってるのに。





いつものように二人でソファに腰掛けて、テレビを流し見る。距離は一定を保ち、近過ぎず、離れ過ぎず。
「テレビつまんないね」

「ん?ああ……」

リモコンの電源ボタンを押すと、プツン、とテレビの画面が真っ黒になった。画面の中には俺とシズちゃんが居る。微妙な距離感の二人が居る。

「ねえ、シズちゃん」

「なんだ?」

俺がそろりとシズちゃんに近付くと、シズちゃんはぎくりと身体を強張らせた。

「……」

ツキン、と胸が痛むのを感じた。そんな、拒否、みたいな態度。傷付くよ、シズちゃん……。
半分自棄になって、俺はシズちゃんに思い切って聞いてみることにした。ずっと気になっていたことを。

「ねえ、シズちゃん。俺のこと、嫌い?……まあ、当然だよね。あんだけ殺し合いの喧嘩してきて、いきなり好きになるなんてさ、無理だよ。告白だって俺からだったし、ほんとは俺のことなんて……」

俺は声が震えないようにするので精一杯。シズちゃんの顔なんか見られなかった。

「手前、本気でそう思ってんのか」

「……シズちゃん?」

地を這うような低い声。思わず顔を上げてシズちゃんを見つめる。
怒らせた、と思った。
でもシズちゃんの表情は、怒りではなかった。
悲しそうな、悲しそうな瞳。
こんな顔をさせてしまった自分に腹が立つほどに、切ない瞳。

「好きじゃねえのに一緒になんか居られっか。俺はいつも言ってんだろうが。手前が好きだって。なのにンな訳分かんねえこと言いやがって……俺の気持ち、伝わってねえのか?」

「シズちゃんの愛って何?言葉だけじゃ伝わらないことだってあるんだよ」

「ハッキリ言えよ、俺に不満があんなら」

「だから、さ……何で俺のこと好きなのに、触って来ないのかって聞いてんの」

シズちゃんの鈍感。こんなこと言うなんて、俺らしくない。ただの女々しい奴だ。
自己嫌悪。言ってから直ぐに後悔した。
きっと今の俺はすごく情けない顔をしているんだろうな。茹で蛸みたいに真っ赤に染まってるはずだ。

「……馬鹿か、手前……そんなの、大切だからに決まってんだろうが」

「え、何?どういう、こと?大切って?俺が大事だから、手出して来ないの?俺が傷付くと思ったから?ねえ、シズちゃん、そうなの?」

予想外の返答に狼狽えながら、シズちゃんを問い詰める。

「…っ、ああ、そうだ!悪いか!」

ムキになって答えるシズちゃんは、耳まで真っ赤にしていた。俺より間抜けな顔かもしれない。ちょっとだけ、笑ってしまった。

「手前っ、臨也!何笑ってやがる!」

「ははっ、いや、うん、俺達ってやっぱり似た者同士だなあって」

どうしようもなくシズちゃんが愛しくなって、シズちゃんの首に腕を回してぎゅうと抱き着く。

「臨也……」

シズちゃんもしっかりと俺を抱き締めてくれた。

「シズちゃん、大好き」

「ああ、俺も……臨也が好きだ」

至近距離で見つめ合い、ゆっくりと確かめるように唇を重ねて、……そして噛み付くようなキスをした。





















20100330


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