(臨也視点)




むかつく。
シズちゃんがむかつく。

身体測定を全て終えて制服に着替えた俺は、次の授業が始まるまでの休み時間、ドタチンと新羅と一緒にシズちゃんの席に集まってくだらない話をしていた。というか、シズちゃんが二人と話しているところを見ていた。

むかつく。

馬鹿みたいに身長が高いところも、さっきシズちゃんに触って気付いたけどいい感じに筋肉がついてるところも。何より、そんなシズちゃんに動揺している自分が、むかつく。

「何見てんだ、ノミ蟲」

席に座っているシズちゃんの頭を睨み付けていたら、ふいにシズちゃんが顔を上げて、視線がぶつかった。

「……別に見てないよ?シズちゃんってば被害妄想激しいー!」

「んだと、手前!」

目が合って内心ドキリとしたけど、いつも通りを装う。
ぎゃあぎゃあと言い争いを始める俺達を見て、新羅がクスリと笑った。

「本当、君等って仲いいのか悪いのか分からないよね」

「俺達が仲良く見えるなんて、新羅は眼科に行くべきだよ」

「そうかなあ?京平も、臨也と静雄は意外と仲良いと思わないかい?」

新羅に話を振られたドタチンは、そうだなあ、と呟いた後、

「少なくとも同じクラスになってからはよくつるんでるからな。静雄が物投げてんのも見ないし」

と言って新羅に同意した。

「俺は……ただ静かに暮らしてぇだけだ。ノミ蟲が何か仕出かさなきゃキレる理由もねぇ」

「あれ?おかしいなあ、一年の頃は俺を見るだけで怒り狂ってたのに。今じゃ俺がここに居ても普通だもんね。シズちゃんも成長したってことかな」

そこで丁度チャイムが鳴ったので、シズちゃんが声を上げる前に自分の席に戻った。
その時、一瞬だけシズちゃんの方を振り返った俺は、目を見開いた。

(……え、嘘)

シズちゃんの耳は、真っ赤に染まっていた。
どういう、ことだろう。
胸がざわつく。
シズちゃんのその反応の意味は理解出来なかったが、耳を赤らめてぐしゃぐしゃと髪を掻き混ぜるシズちゃんは可愛いな、と思った。





次の授業はHRだった。学年が変わって直ぐは色々と決めることがある為、授業編成でHRが多くなる。

「ね、ドタチンは何委員会に入る?」

担任が黒板に一通りの委員会と指定人数を書いている間、後ろの席のドタチンに声を掛けた。

「僕はやっぱり保健委員かなあ」

俺の質問に答えたのは何故か新羅の方だった。新羅が保健委員に入るであろうことは予想していたからつまらない。

「新羅には聞いてないよ。で、ドタチンは?クラス委員とかやっちゃえば?ほら、ドタチンって何かお父さんっぽいし。縁の下の力持ちみたいな感じするし。似合ってるよ」

「クラス委員か……。誰もやる奴が居なかったらな」

「え、まじで?」

冗談のつもりで言ったから、少し驚く。ドタチンはあんまり表に立つタイプではないと思ってたから。
でもドタチンがクラス委員って何となくしっくりくる。何だかんだ言って面倒見もいいからね。

「臨也はどうすんだ?」

「うーん……面白そうなところ」

「いっそのこと生徒会とか入ってみるのはどうだ?」

「ははっ、冗談でしょ。生徒会は色んな情報が入ってくるから便利そうだけど、委員会の仕事で他のことが疎かになるのは嫌だね」

ドタチンの言葉を笑い流し、前に向き直る。黒板をじっと見つめて考えていると、視界の端に金髪が映った。俺と同じく黒板を見つめている。シズちゃんも何の委員会に入ろうか迷っているのだろう。

チョークが黒板を走る音が止んだ。
それからクラス委員から順に決めていく。結局ドタチンはクラス委員に、新羅も無事に保健委員に決まった。
俺とシズちゃんはまだどこの委員会にも名前が書かれていない。

「次。図書委員会。図書委員会の立候補者は居るかー?」

教師の声が響き渡る。
す、と長い腕が挙手されるのが分かった。

シズちゃんの手だ。

(シズちゃん、図書委員やりたかったんだ……)

彼が図書室のカウンターで静かに座っているところを想像すると、何となく可笑しくて笑みが零れた。

「図書委員、他に誰か居ねえかー」

教師の声にハッとする。図書委員会の枠は二つ。一つはシズちゃんの名前で埋まっている。
しかし誰も手を挙げない。まあ、そりゃそうだろう。いくら今は大人しくしていたって、委員会の相方が喧嘩人形と呼ばれている平和島静雄だなんて気が引ける決まってる。

しん、とした教室の静寂を破ったのは――…他でもない、俺だ。

「はい。図書委員会に立候補します」

気付いたら、挙手していた。
ざわ、と教室がどよめく。シズちゃんの方に目をやると、彼もこちらを見ていた。驚きに口をぱくぱくさせている。

(後で色々言われるんだろうなー……。でも仕方ないじゃないか。気付いたら立候補してたんだから)

シズちゃんが一人きりになったら可哀想だという同情か、はたまた別の感情からなのか。
自分が何故立候補してしまったのか、分からない。
でもとにかく俺は、シズちゃんと同じ委員会に所属することになったのだ。
























20100423
何故ドタチンをクラス委員にしたのか、わたしが一番分かりません。でもしっくりきます。



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