(静雄視点)






穏やかな風。暖かな陽射し。青い空。四月。春休み。
あと数日で始業式だ。しかし春休み中であるにも関わらず、俺は今学校の昇降口前に立っている。部活に来た訳ではない。俺は帰宅部だ。
休みの日にわざわざ学校に来た理由は、今日は新しいクラスが発表される日だからだ。
新学期と同時に、新しいクラスでの生活が始まる。二年は修学旅行という学校生活最大のイベントがある。このクラスのメンバーによって、その修学旅行が楽しいものになるかそうでないかが変わってくるのだ。
俺だって普通の学生だ。学校生活を楽しんで罰は当たらねえだろ?
多少の期待を持って学校に向かった。一年で同じクラスだった門田はいい奴だった。あいつがまた同じクラスなら、修学旅行もそれなりに楽しいものになるかもしれない。新羅も変態だが悪い奴ではない。新羅も同じクラスなら、それはそれでいい。

(……俺はB組か)

B組の欄に自分の名前を見つけ、それから門田と新羅の名前も見つけた。
同じクラスだ。
少しだけ、安心する。

俺は携帯を取り出し、アドレス帳で新羅の名前を探した。クラス発表を見たら電話をくれと頼まれていたのだ。
数回のコール音の後、『静雄かい?』という声が聞こえた。

「ああ。今クラス発表見てきた。っつか手前自分で見に来いよ」

『はは、まあついでだと思ってさ。春休み中はセルティの首探しに付き合ったりと色々と忙しくてね。今度購買のパンでも奢るよ』

「ロイヤルメロンパンな」

『静雄は本当にメロンパン好きだよねえ。で、クラスはどうだったのかな?』

「ああ、俺も手前もB組だ。あと門田も一緒だぜ。…………あ?」

昇降口に貼られたクラス発表の紙を見ながら新羅に報告をしていると、ある名前が視界に入った。それもB組の欄にある。

『?どうしたんだい?』

「嘘、だろ……」

『おーい静雄ー?あれ?電波悪い?おーい』

新羅の声は俺の耳に届くことはなかった。強く握った拳が、携帯にヒビを入れたからだ。


折原臨也


そこには、確かにそう書かれていた。
B組の欄に、その、名前が。一番見たくない、名前が。
臨也とは自他共に認める犬猿の仲だ。
顔を合わせれば殺し合いになる。
ノミ蟲とは一年では違うクラスで、それが互いと周りの唯一の救いであった。
それが、二年からは同じクラスになるのだ。
毎日顔を合わせ、毎日同じ授業を受け、毎日同じ空気を吸う。


「……っ、俺とノミ蟲を同じクラスにした奴殺す!!!」


穏やかな風。暖かな陽射し。青い空。
しかしそんな清々しい春の陽気に反し、俺の胸の内は不穏な風が流れ、すっかり冷えきり、灰色に染まっていた。





















20100405
わたしの書くシリーズもの二人は嫌悪感から始まるらしいです。とりあえずシズちゃんにはメロンパンを食べて欲しい。ちなみにB組のBは……いや、なんでもありません。



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