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親と喧嘩した


部活は何だか失敗ばかりして


つまらない忘れ物をして先生にも怒られて


ちょっとした意見のすれ違いで友達に責められて


沈む。沈む。私の体がどんどん沈む。真っ暗い海の底。


上手くいかない時ってとことん上手くいかない。


何に自分がイライラしてるのかも分からない。


全部が全部が嫌んなっちゃって 何か疲れてきて


どうでもいいやって


もう全部が全部 どうでもいい


もうこんな世界から 消えちゃいたい




「えっどっ…え!どした!?」




何でこういう時に会っちゃうの?




「おま…何やこんなとこで座りこんで…お前、部活終わったんか?もう校門閉まってまうで?」


「け…謙也こそ何でいんの…」


「俺は今日白石の代わりに職員室に日誌出してきたとこで…いや んなことどーでもええねん」


人目につかない校舎の影。座り込む私の前で、謙也が一人オロオロと身振り手振りをした。挙動不審。




「何で泣いてるん……」




「…………。」


目頭が再び熱くなった。




「何でもない。関係ない。帰って放っといてどっか行って」


「むっ無茶言うなや!こんなとこ目撃させといて!?」


「あんたが勝手に目撃したんじゃん!」


「そら目撃するわ割りと目立つでここ!?」


「〜〜〜〜!」


「痛!」


力任せに謙也をはたいた。


馬鹿。謙也の馬鹿。自分でも分からないことを、あんたになんて説明出来るわけないじゃんか。


「うっうう〜〜〜〜」


「ぉ…おい…」


「分かんないもん。辛い。辛いぃ〜〜…」


「…………。」


謙也は相変わらずオロオロしていた。


私の目の前で突っ立ったまま、口を閉ざしてしまう。


でも私も今更泣き止めない。止まらない。益々どうしたらいいか分かんない。いいから早く帰ってよ。




「…………。」




謙也の気配が、ゆっくりと私の隣へと移動した。


「…!?」


「逃げんなアホ傷つくわ」


「なっ何なんなのよ、やめてよ」


「やめん」


「ねえ、手、」


「やめん!」


「…っ!?」




そっと握られた手。


大きくてあったかい、謙也の手。




「けっ謙也」


「やめん言うとるやろ」


「〜〜〜〜っ、謙、」






「 いいから、このまま泣け! 」






「っっ……」


ひどいよ








あったかい








「けっ謙也の馬鹿ぁぁ〜〜」


「………。」


「うっううう〜〜最低ぇえ…」


「とんでもない八つ当たりやわ…」


「馬鹿、アホ、くずぅ」


「………。今だけ好き勝手言わせたる代わり、これくらい許せよ」


「っ!?」


そしてぐっと引き寄せられた体。


手だけじゃなくて、体ごと全部すっぽり収めた謙也の腕が、私の背中を優しく撫でた。


謙也のジャージに、私の涙が少しだけ染みた。


「謙也…」


「ん」


「アホぉ…」


「まだ言うん」


「馬鹿、馬鹿やろー、馬鹿あほ馬鹿、」


「………。」


「っ馬鹿………うう……うわあああぁぁん…!!!」






真っ暗な海の底で


謙也の体温と心臓の音だけが


静かに静かに 私の手を引いていった















( きみのぬくもり )









無性に寂しい時 きみに触れたくなる